労働基準法
法第5条は、使用者が労働者の意思に反して労働を強制することを禁止するものですから、使用者と労働者との間に労働関係が存在することを前提としています。
ただ、この労働関係としては、必ずしも形式的に労働契約が成立していることは必要でなく、事実上労働関係が存在していると認められる場合であれば足りると解されています。
今では信じがたいですが、昔の労働慣行でもあった「タコ部屋」をより広い範囲でく禁止するための規定です。
今では信じがたいですが、昔の労働慣行でもあった「タコ部屋」をより広い範囲でく禁止するための規定です。
強制労働の禁止(法5条)
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
趣旨
「タコ部屋」といった過去の強制労働の悪習を排除するため、憲法第18条(奴隷的拘束及び意に反する苦役の禁止)を受けて、労働者の意思に反する労働の強制を禁止した趣旨です。通常は刑法で禁止はされているものの、さらに効果を高めるため、労働者の保護を目的とする労働基準法でも禁止された。
タコ部屋とは、かなりの長い期間、身体的に拘束して、非人道的な労働条件の下、重い肉体労働をさせられる人を「タコ」と呼び、その労働者を監禁する場所を「タコ部屋」と呼ぶ。
使用者
法第5条は、使用者が労働者に強制労働をさせることを禁止する規定である。すなわち、労働を強制する使用者と強制される労働者の間に労働関係があることが前提となる。
その場合の労働関係は、必ずしも形式的な労働契約により成立していることを要求するものではなく、事実上労働関係が存在すると認められる場合であれば足りる。
精神又は身体の自由を不当に拘束する手段
「暴行」、「脅迫」、「監禁」以外の手段で「精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」としては、長期労働契約、労働契約不履行に関する賠償額予定契約、前借金契約、強制貯金の如きのものがあり、労働契約に基づく場合でも、労務の提供を要求するに当たり、「精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」を用いて労働を強制した場合には、本条違反となる。 (昭和22.9.13発基17号、昭和63.3.14基発150号)
意思に反する労働の強制
「労働者の意思に反して労働を強制」するとは、不当なる手段を用いることによって、使用者が労働者の意識ある意思を抑圧し、その自由な発現を妨げ以って労働すべく強要することをいう。従って、必ずしも労働者が現実に「労働」することを必要としない。
例えば、労働契約を締結するに当たり「精神又は身体の自由を不当に拘束する手段」が用いられ、それが意識ある意思を抑圧し労働することを強要したものであれば、本条に該当する。
これに反し、詐欺の手段が用いられても、それは、通常労働者は無意識の状態にあって意思を抑圧されるものではないから、必ずしもそれ自体としては本条に該当しない。
(昭和23.3.2基発381号)
法第5条違反については、1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金に処せられる(法117条)。なお、当該罰則は労働基準法上最も重い罰則である。