労働者の定義(法9条)|労働基準法

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労働者の定義

労働基準法

 法第9条の労働者の定義について、労働基準法と労働組合法では意味の広さが異なります労働基準法と労働組合法の目的が異なるからです。
 労働基準法は、労働者が生活を営むために必要となる最低限の労働条件を規律して労働者を保護する目的の法律であり(労基法1条)、同法9条の「労働者」は、最低限の保障を及ぼす必要がある者という観点から考えられています。
 それに対して、労働組合法は、労働組合による団体交渉によって労働者の地位を向上させること等を目的とする法律であり(労組法1条1項)、同法3条の「労働者」は、労使間の力関係を対等にするべく団体交渉を保障されるべき者という観点から、労基法の「労働者」よりも、広い意味で考えられています
この違いを、正誤問題にしたケースもありました。労働組合法の労働者の定義内容を労働基準法の労働者の定義にした問題。
労働基準法上の労働者性を判断するうえで重要なポイントとなるのは、「使用」性、つまり、使用者の指揮命令を受けて働いていることと、「賃金」性、すなわち、労働の対象として報酬を得ていることの二点です。
 

労働者の定義(法9条)

労働基準法で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働基準法第9条に「労働者」とはどんな人かを定義しています。
(1)職業の種類を問わず
(2)事業所又は事務所に使用される者で
(3)賃金を支払われる者

労働組合法の労働者の定義

 労働組合法上の労働者とは、「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する」(労組法3条)をいいます。 ★『事業又は事務所に使用される者』の文言がありません。

法人、団体又は組合の執行機関

労働基準法にいう労働者とは、事業又は事務所に使用される者で賃金を支払われる者であるから、法人、団体、組合等の代表者又は執行機関たる者の如く、事業主体との関係において使用従属の関係に立たない者は労働者ではない

職員を兼ねる重役

法人のいわゆる重役業務執行権又は代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、その限りにおいて法第9条に規定する労働者である

組合専従職員の労働関係

会社からは給料を受けず、その所属する組合より給料を受ける組合専従職員と使用者との基本的な法律関係は、労働協約その他により労使の自由に定めるところによるが、使用者が専従職員に対し在籍のまま労働提供の義務を免除し、組合事務に専従することを認める場合には、労働基準法上当該会社との労働関係は存続するものと解される。

判例

研修医の労働者性

<概要>
医師国家試験に合格し、大学附属病院において臨床研修を受けていた研修医Aについて、最低賃金法所定の最低賃金額を下回る金員しか支払われていないとして、最低賃金額と受給金額の差額及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた事例

<判決概要>
 医師法第16条の2第1項に定める臨床研修は「医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり、教育的な側面を有しているが、そのプログラムに従い、臨床研修指導医の指導の下に、研修医が医療行為等に従事することを予定している。そして、研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるものというべきである。」関西医科大学研修医(未払賃金)事件(平成17年6月3日最高裁)

インターンシップの大学生

 インターンシップとは、職業経験を積むための大学生(以下「実習生」と呼ぶ)が一定期間企業で働く「職業体験」のこと、あるいはその期間を指します。企業が給与を支払う「有給インターンシップ」もありますが、ほとんどのインターンシップは「無給インターンシップ」です。大学でインターンシップが単位として認められ、その際、給与、交通費、保険は大学が支払う場合もあります。
行政通達から引用
 一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられる。
(平成9年9月18日基発第636号)

判断基準

使用従属性に関する判断基準

 (1)指揮監督下の労働
   ①仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
   ②業務遂行上の指揮監督の有無
   ③拘束性の有無
   ④代替性の有無
 (2)報酬の労務対償性 →『労務の対価』=『賃金』と言える

労働者性の判断を補強する要素

 (1)事業者性の有無
   ①機械、器具の負担関係
   ②報酬の額
 (2)専属性の程度
 (3)その他

労働組合法における「労働者」

 労働組合法で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう。

労働組合法の労働者の範囲

 労働組合法第3条にいう「労働者」とは他人との間に使用従属の関係に立って労務に服し、報酬を受けて生活する者をいうのであって、現に就業していると否とを問わないから失業者をも含む。
 労働組合法は、労働組合による団体交渉によって労働者の地位を向上させること等を目的とする法律であり(労組法1条1項)、同法3条の「労働者」は、労使間の力関係を対等にするべく団体交渉を保障されるべき者という観点から、労基法の「労働者」よりも、広い意味で考えられています。
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