解雇予告及び解雇予告手当の支払(法20条1項、2項)|労働基準法

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労働基準法

 法20条1項、2項は労働者を解雇する時の原則に関する規定です。労働者を解雇する時には少なくとも30日前に予告することが原則で、予告期間が30日に満たない場合は、予告期間30日に対応する解雇予告手当を支払うことを規定しています。過去問でも30日前の予告に満たない場合の取り扱いや支払時期など問われています。

解雇予告及び解雇予告手当の支払(法20条1項、2項)

Ⅰ 使用者は、労働者解雇しようとする場合において、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上平均賃金解雇予告手当)を支払わなければならない。

Ⅱ Ⅰの予告日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数短縮することができる。

解雇の予告

 民法第627条第1項においては、期間の定めのない雇用契約につき、原則として2週間前に予告をすれば解約できると規定されている。しかし、労働者が解雇され、次の就業先を見つけるためには2週間程度では足りないため、法第20条においては、使用者に対し労働者を解雇する場合に30日前に解雇の予告をすべきことを義務付けている。なお、労働者側から意思表示する任意退職の場合は、労働基準法には特に規定されていないので、一般的には民法第627条の規定により2週間前に労働契約の解約の申出をすることになる。

解雇予告期間

 予告期間の計算については、労働基準法に特別規定がないので、民法の一般原則によることとなり、解雇予告がなされた日は算入せず、その翌日より計算され、期間の末日の終了をもって期間の満了となるので、予告の日と、解雇の効力発生の日との間に中30日間の期間をおくこと必要がある。
 また、30日間は労働日ではなく暦日で計算されるので、その間に休日又は休業日があっても延長されない。したがって、例えば7月31日に解雇する(その日の終了をもって解雇の効力発生=8月1日を解雇の効力発生日とする)ためには、遅くとも7月1日には、解雇の予告をしなければならない。

 

 解雇予告期間と解雇予告手当については、両者を併用して30日分以上にする方法でも構わない。例えば、18日分の平均賃金を支払うのであれば、12日前の解雇予告でも足りる。
(予告の日数を短縮できる)

 

解雇予告の取消し

 解雇予告の意思表示は、一般的には取り消すことができないが、労働者が具体的事情の下に自由な判断によって同意を与えた場合には、取り消すことができるものと解すべきである。解雇予告の意思表示の取消しに対して、労働者の同意がない場合は、自己退職の問題は生じない。
(昭和25.9.21基収2824号、昭和33.2.13基発90号)

解雇予告と解雇制限期間の関係

 解雇予告期間満了の直前に労働者が業務上の傷病のために休業をした場合には、法第19条の解雇制限の適用があるので、制限期間中の解雇はできない。ただし、その休業期間が長期にわたるようなものでない限り、解雇予告の効力の発生が停止したにすぎないので、改めて解雇予告をする必要はない。(昭和26.6.25基収2609号)

 

予告期限到来後の解雇

 30日前に予告はしたが、予告期間満了後引き続き使用する場合には、通常同一条件でさらに労働契約がなされたものとみなされるので、その解雇予告については無効となり、その後解雇する場合には改めて法第20条所定(解雇予告等)の手続きを経なければならない。
(昭和24.6.18基発1926号)

予告期間中の労働関係

 解雇予告と同時に休業を命じ、解雇予告期間中は平均賃金の60%の休業手当しか支払わなかった場合でも、30日前に予告がなされている限り、その労働契約は予告期間の満了によって終了する。(昭和24.12.27基収1224号)

解雇予告手当

 解雇予告手当は解雇の申渡しと同時に支払うものとされ、解雇の意思表示に際して支払わなければ解雇の効力を生じないものと解されていることから、一般には解雇予告手当については時効の問題は生じない。なお、解雇予告手当は、法第11条の賃金ではないが、法第24条「賃金の支払」の規定に準じて、通過で直接労働者に支払うのが望ましいとされている。
(昭和23.3.17基発464号、昭和23.8.18基収2520号、昭和27.5.17基収1906号)

最低年齢に満たない労働者の解雇

 

 法第56条の最低年齢違反の無効な労働契約のもとに就労していた児童を解雇する場合にも、本条が適用され、かつ予告による違法状態の継続を認めない建前から、予告手当を支払い、即時解雇すべきである。(昭和23.10.18基収3102号)
9.予告期間及び予告手当の支払いなき解雇

 

 法第20条による法定の予告期間を設けず、また法定の予告に代わる平均賃金を支払わないで行った即時解雇の通知は即時解雇としては無効であるが、使用者が解雇する意思があり、かつその解雇が必ずしも即時解雇であることを要件としていないと認められる場合には、その即時解雇の通知は法定の最短期間である30日経過後において解雇する旨の予告としての効力を有する。(昭和24.5.13基収1483号)

参考通達

解雇予告の方法

 解雇予告は、直接個人に対して解雇の意思表示が明確に伝わる方法でなされるべきであり、文書で行うのが確実な方法であるが、口頭で行っても有効である。ただし、口頭で予告した場合には、解雇に関して争いが起こった場合に証明困難となる場合が多いので、解雇予告の手続きとしてはそれに加えて労働者に書面を交付することにより解雇予告することが望ましい。

組合専従者の解雇予告手当

 労働組合専従者である労働者を予告せずに解雇しようとするには、会社より賃金を受けていない場合であっても、組合専従期間中も会社に在籍するものである限り、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。(昭和24.8.19基収1351号)

予告手当の概算払い

 多人数の労働者を一時に整理する等において、平均賃金を正確に計算して支払うことが実際問題として不可能である場合には、平均賃金30日分の概算額を支払って即時解雇してもよいが、残余の不足額については、その後速やかに提供しなければならない。(昭和24.7.2基収2089号)
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