療養(補償)給付/給付の範囲及び支給期間|労災保険

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療養(補償)給付/給付の範囲及び支給期間(法13条2項)

給付の対象となる療養の範囲や期間は「療養の給付」「療養の費用の支給」どちらも同じです。

療養(補償)給付は、治療費、入院料、移送費など通常療養のために必要なものが含まれ、傷病が治癒(症状固定)するまで行われます。

療養の給付の範囲は、次のⅰからⅵ(政府が必要と認めるものに限る。)による。

ⅰ 診察

ⅱ 薬剤又は治療材料の支給

ⅲ 処置、手術その他の治療

ⅳ 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護

ⅴ 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護

ⅵ 移送

 

療養

「療養」とは、傷病を「治す」ために診療を受けたり休養したりすることを指し、傷病が治ゆした後に行われる義肢の装着のための再手術などの「外科後処置」は、当該保険給付の対象外となります。

労働基準法との関係

労災保険法の療養補償給付たる療養の給付の範囲は、労働基準法施行規則第36条(療養補償の規定による療養の範囲)の療養補償の療養項目のうち「政府が必要と認めるものに限る」と定めています。

⑴ 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。

⑵ ⑴に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。

⑶ ⑵の規定による療養の範囲は、次に掲げるものにして、療養上相当と認められるものとする。

① 診察
② 薬剤又は治療材料の支給
③ 処置、手術その他の治療
④ 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
⑤ 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
⑥ 移送              (労基法75条、労基則36条)

【参考通達】

(義肢等)
健全肢を有していた労働者が業務災害により四肢を離断又は切断して義肢を必要とする場合は、社会復帰促進等事業として義肢が支給される。(昭和24.11.11基災発313号)

 

(義歯等)
歯科補ほ綴ていの際の「金冠」の使用は、歯科補綴の効果又はその技術上の必要から、特に金を使用することを適当とする場合に限り、保険給付の対象となる。(昭和23.2.23基災発24号)

 

(柔道整復師等)
柔道整復師の骨折又は脱臼に対する施術については、応急手当の場合を除いて、医師の同意がある場合にのみ保険給付の対象となる。また、はり、きゅう及びマッサージについても、医師が必要と認めることなど一定の要件を満たした場合は保険給付の対象となることがある。 (昭和31.11.6基発754号、平成8.2.23基発79号)

 

(温泉療養)
医師が直接の指導を行わない温泉療養は保険給付の対象とされない。ただし、病院等の付属施設で医師が直接指導のもとに行うものについては保険給付の対象となる。 (昭和25.10.6基発916号)

 

(リハビリテーション医療)
労災保険においては、療養(補償)給付の一環として、リハビリテーション医療も行われている。
リハビリテーション医療とは、業務上の事由又は通勤による傷病労働者に対して当該傷病に係る本来の治療に加え、疾患別リハビリテーション等を個々の症例に応じて総合的に実施して、労働能力の回復をはかり職場復帰への医学的指針を与えるまでの一連の行為をいう。 (平成19.1.30基発0130005号)

 

移送の取扱いについて

住居地または勤務地から、原則、片道2キロメートル以上の通院であって、次の①から③のいずれかに該当するもの

➀同一市町村内の適切な医療機関へ通院したとき

➁同一市町村内に適切な医療機関がないため、隣接する市町村内の医療機関へ通院したとき

➂同一市町村内および隣接する市町村内に適切な医療機関がないため、それらの市町村を超えた最寄りの医療機関へ通院したとき

【参考通達】

「移送の取扱いについて」の一部改正について(平成20年10月30日、基発第1030001号)

通院

イ 傷病労働者の住居地又は勤務地と同一の市町村(特別区を含む。以下同じ。)内に存在する当該傷病の診療に適した労災病院又は労災指定医療機関(以下「労災指定医療機関等」という。)への通院(傷病労働者の住居地又は勤務地から片道2キロメートル以上の通院に限る。)。

ロ 傷病労働者の住居地若しくは勤務地と同一の市町村内に当該傷病の診療に適した労災指定医療機関等が存在しない場合、又は交通事情等の状況から傷病労働者の住居地若しくは勤務地と同一の市町村に隣接する市町村内の当該傷病の診療に適した労災指定医療機関等への通院の方が利便性が高いと認められる場合における傷病労働者の住居地若しくは勤務地と同一の市町村に隣接する市町村内にある当該傷病の診療に適した労災指定医療機関等への通院(傷病労働者の住居地又は勤務地から片道2キロメートル以上の通院に限る。)。

ハ 傷病労働者の住居地又は勤務地と同一の市町村内及び傷病労働者の住居地又は勤務地と同一の市町村に隣接する市町村内に当該傷病の診療に適した労災指定医療機関等が存在しない場合における最寄りの当該傷病の診療に適した労災指定医療機関等への通院(傷病労働者の住居地又は勤務地から片道2キロメートル以上の通院に限る。)。

ニ 傷病労働者の住居地又は勤務地から片道2キロメートル未満の通院であっても、傷病労働者の傷病の症状の状態からみて、交通機関を利用しなければ通院することが著しく困難であると認められる場合における当該傷病の診療に適した労災指定医療機関等への通院。

 

支給期間

療養(補償)給付は、療養の必要が生じたときから、傷病が治癒(ちゆ)するか、又は労働者が死亡して療養を必要としなくなるまで行われます。

なお、「治癒」とは治療の必要がなくなった状態になることをいい、症状が残っている場合でも、症状が安定し、疾病が固定して治療の効果が期待できない状態(「症状固定」の状態)になった場合には「治癒」したことになり療養(補償)給付の対象外となる。

したがって、「傷病の症状が、投薬・理学療法等の治療により一時的な回復がみられるにすぎない場合」など症状が残存している場合であっても、医療効果が期待できないと判断される場合には、労災保険では「治癒」(症状固定)として、療養(補償)給付を支給しないこととなっています。

 

【ご参考】

(事業主の証明義務)
事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。 (則23条2項)

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