支給制限・一時差止め|労災保険

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支給制限・一時差止め

被災労働者等が業務災害/通勤災害により負傷、疾病、障害、死亡となった場合、労災保険から給付が行われますが、保険給付の原因となる事故が、労働者の責に帰すべき事由により 発生した場合、または、被災労働者が適正な保険診療に反する行為をした場合などには、ペナルティとして、労災保険からの給付を一切行わないことや一部減額するなど、労災保険の支給を制限したり、一時差し止めする場合があります。

絶対的支給制限 (法12条の2の2,1項)

 労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない

故意に

一般に故意とは、わざとすること。法律用語で、自分の行為が一定の結果を生ずべきことを認識し、かつ、この結果を生ずることを認容することをいう。ただし、被災労働者が結果の発生を認容していても業務との因果関係が認められる事故については、本項の適用はありません。

[絶対的支給制限]の規定の意義

法第12条の2の2第1項の規定は、業務上とならない事故について確認的に定めたものであって、労働基準法第78条[休業補償及び障害補償の例外]の規定で、結果の発生を意図した故意によって事故を発生させたときは当然業務外とし、重大な過失による事故のみについて定めていることと対応するものである。したがって、被災労働者が結果の発生を認容していても業務との因果関係が認められる事故については、同項の適用がないのはいうまでもありません。

(昭和40.7.31基発901号)

 

自殺の扱い

精神障害によらない自殺(いわゆる覚悟の自殺)の場合は、その主な動機が業務に関連するとしても、「故意」に該当するので、保険給付の対象とされません(業務上災害に被災し、今後の職業生活に絶望して自殺をした場合など)。

法第12条の2の2第1項の「故意」については、結果の発生を意図した故意であると解釈してきたところであるが、業務上の精神障害によって、正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたと認められる場合には、結果の発生を意図した故意には該当しない取扱いとする。

(平成11.9.14基発545号)

 

相対的支給制限 (法12条の2の2,2項)

 政府は、次の場合には保険給付の全部又は一部を行わないことができる。

ⅰ 労働者故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、負傷疾病障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となった事故を生じさせ、又は負傷疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたとき。

ⅱ 労働者正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたとき。

故意の犯罪行為

「故意の犯罪行為」とは、事故の発生を意図した故意はないがその原因となる犯罪行為が故意によるものであることをいう。 (昭和40.7.31基発901号)

簡単に言うと、車を運転していて、制限速度をオーバー(犯罪行為)して曲がりきれずに壁にぶつかり負傷した場合など。

 

故意の犯罪行為又は重過失の場合の支給制限

労働者が故意の犯罪行為若しくは重大な過失により、負傷、疾病、障害若しくは死亡若しくはこれらの原因となった事故を生じさせ、又は負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときの支給制限の内容は次の通りです。

 

支給制限の対象となる保険給付

支給制限の内容

休業(補償)給付

障害(補償)給付

傷病(補償)年金

保険給付のつど所定給付額の30%を減額する。

ただし、年金給付については、療養開始後3年

以内の期間に係る分に限る。

 

・故意の犯罪行為若しくは重大な過失を理由とする支給制限は、法令(労働基準法や道路交通法等)上の危害防止に関する規定で罰則の附されているものに違反すると認められる場合に適用されます。

・労働基準法で支給制限の対象となるのは、休業補償と障害補償です〔労働者が重大な過失によって業務上負傷し、又は疾病にかかり、且つ使用者がその過失について行政官庁の認定を受けた場合においては、休業補償又は障害補償を行わなくてもよい(労基法78条)〕。傷病(補償)年金はその意味で本来は支給制限の対象外であるが、療養開始後3年を経過する日の属する月までの分については、休業(補償)給付とみなして取り扱う。 (昭和52.3.30基発192号)

 

療養に関する指示違反の場合の支給制限

労働者が正当な理由がなくて療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病若しくは障害の程度を増進させ、若しくはその回復を妨げたときの支給制限の内容は次の通りであす。

支給制限の対象となる保険給付

支給制限の内容

休業(補償)給付事案1件につき、10日分相当額を減額
傷病(補償)年金事案1件につき、年金額10/365相当額を減額

(昭和52.3.30基発192号)

療養(補償)給付、介護(補償)給付、遺族(補償)給付、葬祭料(葬祭給付)及び二次健康診断等給付は、故意の犯罪行為又は重過失並びに療養に関する指示違反があった場合の支給制限の対象外である。

 

支給制限のまとめ

1.故意に事故を起こした(絶対的支給制限)

→ 保険給付を行わない

2.故意の犯罪行為、重大な過失、療養指示に従わないで事故を起こした、症状が悪くなった(相対的支給制限)

→ 全部 又は 一部を行わないことができる

一時差止め (法47条の3)

 政府は、保険給付を受ける権利を有する者が、正当な理由がなくて、第12条の7[保険給付に関する届出等]の規定による届出をせず、若しくは書類その他の物件の提出をしないとき、又は前2条[労働者及び受給者の報告、出頭等及び受診命令]の規定による命令に従わないときは、保険給付の支払一時差し止めることができる。

 

一時差止めと支給停止

「保険給付の支払を一時差し止める」とは、金銭給付の支払を受給権者に対して一時的にしないことであり、差止め事由がなくなれば留保した金銭給付の支払を行うことになります(なお、「保険給付の支給を停止する」場合は、支給停止解除事由に該当し支給を再開することとなっても、支給停止期間中の分については支払われません。)。

差止め事由

保険給付の支払を一時差し止めることができるのは次の場合である。

⑴ 保険給付に関する届出をしないとき

⑵ 書類その他の物件の提出をしないとき

⑶ 労働者及び受給者の報告出頭等及び受診命令従わないとき

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