労働契約の終了(解雇)|労働基準法

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解雇

労働基準法

労働契約の終了

 「解雇」とは何か?「解雇」のルールについて解説します。

 使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了を「解雇」といいますが、解雇は、使用者がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできません。解雇するには、社会の常識に照らして納得できる理由が必要となります。
 

解雇

 「解雇」とは、労働契約を将来に向かって解約する使用者側の一方的意思表示である。
したがって、労働関係の終了事由のうちでも、労使間の合意による解約労働契約期間満了、労働者側からするいわゆる任意退職等は、原則として、解雇ではない

解雇の制限

 労働基準法は、いわゆる解雇自由の原則については直接修正を加えることなく、法第19条において労働者が解雇後の就業活動に困難を来すような場合に一定の期間について解雇を一時制限し、労働者が生活の脅威を被ることがないように保護し、法第20条において労働者が突然の解雇から被る生活の困窮を緩和するため、使用者に対し労働者を解雇する場合に30日前に解雇の予告をすべきことを義務付けている。

解雇権濫用法理

 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。(労働契約法16条)
 民法は期間の定めのない雇用契約の解約の自由を定めている(民法627条1項)。しかし、使用者が行う一方的な解約である解雇については労働者に与える影響が大きいことを考慮して、判例により解雇理由の規制である解雇権濫用法理が確立した。この法理は平成15年労働基準法改正により同法第18条の2として法律上明文化され、さらに平成19年の労働契約法制定に伴って労働契約法第16条に移行されたものである。


合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇の無効について

 労働契約法第16条では「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとみなし無効」である旨が定められています。
 この条文は解雇の内容に関するルールを定めたものです。解雇の内容に関するルールは一般に「解雇権濫用法理」と呼ばれ、昭和50年の最高裁判決以降、判例として確立されたもので、平成15年の労働基準法改正により法文上明記されましたが、平成20年労働契約法の施行にともなってこの労働基準法の規定をそのまま同法へ移し、労働契約法16条としたものです。よって「合理的な理由の無い、社会通念上妥当と判断されない解雇」は無効となり、解雇そのものが否定され、労働契約は依然として存在することになります。
  解雇に合理的な理由等があるか否かの判断は個別、具体的に行うことになりますが、会社の経営不振等を理由とする労働者の「整理解雇」については、判例においていわゆる整理解雇の4要件が以下のとおり示されています。整理解雇を適正に実施するためには原則として、以下の4要件全てを満たす必要があります。
1.経営上の必要性

倒産寸前に追い込まれているなど、整理解雇をしなければならないほどの経営上の必要性が客観的に認められること
2.解雇回避の努力
配置転換、出向、希望退職の募集、賃金の引下げその他整理解雇を回避するために会社が最大限の努力を尽くしたこと
3.人選の合理性
勤続年数や年齢など解雇の対象者を選定する基準が合理的で、かつ、基準に沿った運用が行われていること
4.労使間での協議
整理解雇の必要性やその時期、方法、規模、人選の基準などについて、労働者側と十分に協議し、納得を得るための努力を尽くしていること

労働者派遣契約の解除

 派遣中の労働者の労働契約と当該派遣中の労働者を派遣している労働者派遣契約とは別個のものであり、派遣先による労働者派遣契約の解除について、労働基準法の解雇に関する規制が適用されることはない。したがって、派遣先が、派遣中の労働者の解雇制限期間中に労働者派遣を解除し、又は、予告期間なしに即時に解除することは労働基準法上の問題はないが、派遣元の使用者が当該派遣されていた労働者を解雇しようとする場合には、労働基準法が適用されるので、解雇制限期間中は解雇できず、また、解雇予告等の手続きが必要となる。
 労働基準法第19条及び20条における事業の継続が不可能であるかどうかの判断は、派遣の事業について行われるので、仮に、当該派遣中の労働者が派遣されている派遣先の事業の継続が不可能となったとしても、これは該当しない。(昭和61.6.6基発333号)

定年制と解雇予告

 定年退職の場合も、就業規則に「重役会議の議を経て、定年後も継続して使用する場合がある」といった規定があるような場合は契約が自動的に終了するものと解されない可能性があり、解雇の問題が生じる余地がある。(昭和22.7.29基収2649号)

判例

定年退職制

 「定年退職制」とは、定年に達したことによって自動的に退職する制度であり、「定年解雇制」とは、定年に達したことを理由として解雇する制度であるが、「定年解雇制」に基づく解雇は、法第20条所定の解雇の制限に服すべきものであるとするのが、最高裁判所の判例である。
(最大判昭和43.12.25秋北バス事件)
定年退職制
定年に達したことによって自動的に退職する制度*1
解雇の規定
適用なし
定年解雇制
定年に達したことを理由として解雇する制度*2
解雇の規定
適用あり
(昭和26.8.9基収3388号)
*1 就業規則に定めた定年制が、労働者の定年に達した翌日をもってその雇用契約は自動的に終了する旨を定めたことが明らかであり、かつ、従来この規定に基づいて定年に達した際に当然労働関係が消滅する慣行となっていて、それが従業員にも徹底している場合
*2 労働者が所定の年齢に達したときに、使用者が解雇の意思表示をし、それによって労働契約を終了させるもの。会社の都合や労働者の事情を考慮して定年に達した者をそのまま勤務延長したり、身分を変更して嘱託等として再雇用し、引き続き使用している等の場合は、労働者は定年に達した後も引き続き雇用されることを期待することになり、使用者からそのような例外的な取扱いをしないことが明示されるまでは、定年後の身分が明確にならないこととなる。
*1の「定年退職制」は、定年が労働契約の終了事由である場合ですが、*2の「定年解雇制」は、定年が解雇事由である場合であり、この定年解雇制については労基法等の解雇に関する規制が適用されます。
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