内払処理・充当処理|労災保険

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内払処理・充当処理

年金では、「内払処理と充当処理」の規定が出てきます。ともに年金の過誤払いがおこったときに、事務処理の煩雑化を防ぐために使われる支給調整です。意味としては、後の支払い分と相殺するイメージです。内払処理と充当処理は類似していますのでしっかりと区別して理解しましょう。内払処理とは、同一の受給権者について行われる処理であり、充当処理は、異なる受給権者の間で行われます。このことをしっかりと区別しましょう。充当処理は2人が登場人物となりますが、そのうち1人が「死亡」した場合に、残された遺族(債務を弁済すべき者)に支払うべき保険給付についての支給調整の問題です。必ず「死亡」が絡むのが充当処理の特徴です。

 

内払処理

年金を支給停止する際に、誤って支給を継続した場合、本来であればこれを返還してもらい、支給停止事由が消滅したときに改めて給付を行うことになります。
しかし、このような場合、事務処理が煩雑になるため本来返還してもらう分をその後に支払うべき保険給付に充てる規定が設けられています。

内払処理が行われるのは、次の3つの場合である。

① 支給停止の場合

年金の支給を停止すべき事由が生じたにもかかわらず、その停止すべき期間の分として年金が支払われたとき。

② 減額改定をする場合

年金を減額して改定すべき事由が生じたにもかかわらず、その事由が生じた月の翌月以後の分として減額しない年金が支払われたとき。

③ 受給権消滅の場合

年金等の受給権が消滅した場合において、その受給権が消滅した月の翌月以後の分として年金等が支払われたとき。

 

支給停止の場合 (法12条1項)

 年金たる保険給付支給を停止すべき事由が生じたにもかかわらず、その停止すべき期間の分として年金たる保険給付が支払われたときは、その支払われた年金たる保険給付は、その後に支払うべき年金たる保険給付の内払とみなすことができる。

「支給停止の場合」には、年金間で内払処理が行われます。

「支給を停止すべき事由が生じた例」

・遺族(補償)年金の若年停止の場合

・障害(補償)年金前払一時金又は遺族(補償)年金前払一時金の支給を受けたことにより、障害(補償)年金又は遺族(補償)年金の支給が停止される場合 など

 

減額改定の場合 (法12条1項)

 年金たる保険給付減額して改定すべき事由が生じたにもかかわらず、その事由が生じた月の翌月以後の分として減額しない額年金たる保険給付が支払われた場合における当該年金たる保険給付当該減額すべきであった部分については、その後に支払うべき年金たる保険給付の内払とみなすことができる。

「減額改定の場合」も年金間で内払処理が行われる。

「減額して改定すべき事由が生じた例」

・障害の程度の軽減により障害(補償)年金の額が減額改定される場合

・遺族(補償)年金の額が、遺族の数の減少により減額改定される場合 など

受給権消滅等の場合 (法12条2項、3項)

Ⅰ 同一の傷病(同一の業務上の事由又は通勤による負傷又は疾病)に関し、年金たる保険給付遺族補償年金及び遺族年金を除く。以下「乙年金」という。)を受ける権利を有する労働者が他の年金たる保険給付遺族補償年金及び遺族年金を除く。以下「甲年金」という。)を受ける権利を有することとなり、かつ、乙年金を受ける権利が消滅した場合において、その消滅した月の翌月以後の分として乙年金が支払われたときは、その支払われた乙年金は、甲年金の内払とみなす。

Ⅱ 同一の傷病に関し、年金たる保険給付遺族補償年金及び遺族年金を除く)を受ける権利を有する労働者が休業補償給付若しくは休業給付又は障害補償一時金若しくは障害一時金を受ける権利を有することとなり、かつ、当該年金たる保険給付を受ける権利が消滅した場合において、その消滅した月の翌月以後の分として当該年金たる保険給付が支払われたときも、同様とする。

Ⅲ 同一の傷病に関し、休業補償給付又は休業給付を受けている労働者が障害補償給付若しくは傷病補償年金又は障害給付若しくは傷病年金を受ける権利を有することとなり、かつ、休業補償給付又は休業給付を行わないこととなった場合において、その後も休業補償給付又は休業給付が支払われたときは、その支払われた休業補償給付又は休業給付は、当該障害補償給付若しくは傷病補償年金又は障害給付若しくは傷病年金内払とみなす。

・受給権消滅の場合の内払処理

次表の場合に内払処理が行われる。

受給権が消滅した保険給付

新たに支給される保険給付

障害(補償)年金傷病(補償)年金、障害(補償)一時金

休業(補償)給付

傷病(補償)年金障害(補償)給付(年金又は一時金)

休業(補償)給付

休業(補償)給付傷病(補償)年金

障害(補償)給付(年金又は一時金)

・年金と一時金 間でも内払処理が行われます。

 

休業(補償)給付から傷病(補償)年金に切り替わったにもかかわらず、誤って

休業(補償)給付が支給された場合(上表一番下の例)

受給権消滅の場合であっても、遺族(補償)年金は内払処理の対象とはされません。

 

 

充当処理 (法12条の2)

 

年金保険給付の受給権者が死亡したためその受給権が消滅したにもかかわらず、引続きその年金保険給付が誤って支払われた場合、これを返還すべき義務を負う者に対して支払う保険給付があるときは、保険給付の金額を返還すべき金額に充てて、返還があったものとして処理することができます。

 年金たる保険給付を受ける権利を有する者が死亡したためその支給を受ける権利が消滅したにもかかわらず、その死亡の日の属する月の翌月以後の分として当該年金たる保険給付の過誤払が行われた場合において、当該過誤払による返還金に係る債権(以下「返還金債権」という。)に係る債務の弁済をすべき者に支払うべき保険給付があるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該保険給付の支払金の金額を当該過誤払による返還金債権の金額充当することができる。

 

・充当処理の対象となるケース

① 年金たる保険給付の受給権者が死亡し、当該死亡に関して新たに保険給付の受給権者となる者が生じる場合に、新たに受給権者となる者が当該死亡に伴う過誤払による返還金債権に係る債務の弁済をなすべき者であるときは、次表左欄に掲げる年金たる保険給付の種類に応じ、右欄に掲げる保険給付の支払金の金額を当該過誤払による返還金債権の金額に充当することができます。

過誤払された

年金保険給付

受給権者の死亡により新たに受給権者となった者に

支給すべき保険給付

障害(補償)年金遺族(補償)年金、遺族(補償)一時金、

葬祭料(葬祭給付)、障害(補償)年金差額一時金

遺族(補償)年金遺族(補償)年金、遺族(補償)一時金、

葬祭料(葬祭給付)

傷病(補償)年金

 

② 年金たる保険給付の受給権者が死亡し、当該年金たる保険給付について他に同順位の受給権者がいる場合に、同順位の受給権者が当該死亡に伴なう過誤払による返還金債権に係る債務の弁済をなすべき者であるときは、次表左欄に掲げる保険給付の種類に応じ、右欄に掲げる保険給付の支払金の金額を当該過誤払による返還金債権の金額に充当することができる。

過誤払された

年金たる保険給付

同順位の受給権者が死亡した場合の他の同順位の受給

権者に支給すべき年金たる保険給付

遺族(補償)年金遺族(補償)年金
充当処理の対象となる「過誤払分を返還すべき債務を負っている者に支払うべき保険給付」は、死亡した者と関連があるものであることを要し、全く別の事由により支給される保険給付は含まれない。

 

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