解雇制限の解除(法19条1項ただし書、2項、則6条)|労働基準法

 

労働基準法
 法第19条第1項ただし書は、1項前半の解雇制限期間中の者でも解雇できる例外規定です。

 

解雇制限の解除(法19条1項ただし書、2項、則6条)

労働基準法第19条1項の「ただし書き」以降の後半部分は解雇制限期間内であっても解雇が許されるパターンを規定しています。ここでは後半部分について解説します。

Ⅰ 次の場合には、法第19条第1項本文の解雇制限の規定は適用されない。

  1.  使用者が、法第81条の規定によって打切補償支払う場合。
  2.  天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合。

Ⅱ Ⅰ2の場合においては、その事由について行政官庁所轄労働基準監督署長)の認定を受けなければならない。

解雇制限の解除

 

法第81条の規定によって打切補償を支払う場合

 「打切補償」とは、企業が療養補償を支払う期間が3年に達しても、従業員の負傷・疾病が完治しない場合に、平均賃金の1200日分を支給することで、それ以降の補償責任を免れる制度のことを指します。
 解雇制限の一つである業務上傷病のによる休業期間及びその後30日間中でも、法第81条の規定による打切補償を支払った場合には当該労働者を解雇することができる。療養補償等を継続して行う場合には、打切補償を支払う必要はないが、療養開始後3年を経過しても打切補償を行わない限り、解雇することは認められない。また、打切補償の支払を約しただけの場合又はその一部の支払をしただけの場合は、打切補償を支払ったことにならないので、解雇することはできない。

天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合

 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合にも、解雇制限の規定は解除されるが、その事由の存否について所轄労働基準所長の認定が必要となる。
これは、この解雇制限除外事由が、その性質上個々の具体的事実に基づいて判断する必要があり、また、第一次的にせよ使用者の一方的判断に委ねる場合には実際上労働者が損害を被ることも多くなる関係からこれを防止する必要もあるからである。

認定基準

 (1)「やむを得ない事由」とは、天災事変に準ずる程度に不可抗力に基づき、かつ突発的な事由の意味であり、事業の経営者として、社会通念上採るべき必要な措置をもってしても通常如何ともし難いような状況にある場合をいう。(63.3.14基発150)
「やむを得ない事由」に
該当する場合
「やむを得ない事由」に
該当しない場合
①事業場が火災により焼失した場合
(事業主の故意又は重大な過失に基づく場
合を除く)
震災に伴う工場、事業場の倒壊、類焼等に
より事業の継続が不可能となった場合
①事業主が経済法令違反のため強制収容さ
れ、又は購入した諸機械、資材等を没収さ
れた場合
②税金の滞納処分を受け事業廃止に至った
場合
事業経営上の見通しの齟齬の如き事業主
の危険負担に属すべき事由に起因して
材入手難金融難に陥った場合(個人企業
で別途に個人財産を有するか否かは本条
の認定には直接関係がない)
④従来の取引事業場が休業状態となり、発注
品なく、ために事業が金融難に陥った場合
(2)「事業の継続が不可能となる」とは、事業の全部又は大部分の継続が不可能になった場合
をいうのであるが、例えば当該事業所の中心となる重要な建物、設備、機械等が焼失を免れ
多少の労働者を解雇すれば従来通り操業しうる場合、従来の事業は廃止するが多少の労働者
を解雇すればそのまま別個の事業に転換しうる場合、又は一時的に操業中止のやむなきに至
ったが、事業の現況、資材、資金の見通し等から全労働者を解雇する必要に迫られず、近く
再開復旧の見込が明らかであるような場合は含まれない。(昭和63.3.14基発150号、婦発47号)

参考通達

労災保険給付を受けて休業する労働者に対する解雇制限にかかる判決について

1.労基法第19条第1項ただし書の解釈にかかる同判決の要旨は次のとおりである。
  • 労基法上の使用者の災害補償義務は、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づく保険給付(以下「労災保険給付」という。)が行われている場合には、それによって実質的に行われているといえるので、災害補償を使用者自身が負担している場合と、労災保険給付が行われている場合とで、労基法第19条第1項ただし書の適用を異にすべきものとはいい難い。
  • 労災保険給付が行われている場合は、打切補償として相当額の支払がされても傷害又は疾病が治るまでは必要な給付が行われるため、労基法第19条第1項ただし書の適用があるとしても、労働者の利益につきその保護に欠くことになるものともいい難い。
  • したがって、労災保険法第12条の8第1項第1号の療養補償給付を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても疾病等が治らない場合には、労基法第75条による療養給付を受ける労働者が上記の状況にある場合と同様に、使用者は、当該労働者につき、同法第81条の規定による打切補償の支払をすることにより、解雇制限の除外事由を定める同法第19条第1項ただし書の適用を受けることができるものと解するのが相当である。


2.今後における労基法第19条第1項ただし書の適用にかかる解釈運用は、上記1の3つ目の点によって行うものである。(平成27.6.9基発0609第4号)

判例

打切補償と労災保険給付

労災保険法の療養補償給付を受ける労働者に対して、打切補償の支払による解雇制限期間の解除の可否が問題となった判決であり、これを肯定したものです。
 労災保険法の制定の目的並びに業務災害に対する補償に係る労働基準法及び労災保険法の規定の内容等に鑑みると、業務災害に関する労災保険制度は、労働基準法により使用者が負う災害補償義務の存在を前提として、その保障負担の緩和を図りつつ被災した労働者の迅速かつ公正な保護を確保するため、使用者による災害補償に代わる保険給付を行う制度であるということができ、このような労災保険法に基づく保険給付の実質は、使用者の労働基準法上の災害補償義務を政府が保険給付の形式で行うものであると解するのが相当である。このように、労災保険法第12条の8第1項第1号から第5号までに定める各保険給付は、これらに対応する労働基準法上の災害補償に代わるものということができます。
 労働基準法第81条の定める打切補償の制度は、使用者において、相当額の補償を行うことにより、以後の災害補償を打ち切ることができるものとするとともに、同法第19条第1項ただし書においてこれを同項本文の解雇制限の除外事由とし、当該労働者の療養が長期間に及ぶことにより生ずる負担を免れることができるものとする制度であるといえるところ、上記のような労災保険法に基づく保険給付の実質及び労働基準法上の災害補償との関係等によれば、同法において使用者の義務とされている災害補償は、これに代わるものとしての労災保険法に基づく保険給付が行われている場合にはそれによって実質的に行われているものといえるので、使用者自らの負担により災害補償が行われている場合とこれに代わるものとしての同法に基づく保険給付が行われている場合とで、同項ただし書の適用の有無につき取扱いを異にすべきものとはいい難い。また、後者の場合には打切補償として相当額の支払がされても傷害又は疾病が治るまでの間は労災保険法に基づき必要な療養保障給付がされることなども勘案すれば、これらの場合につき同項ただし書の適用の有無につき異なる取扱いがされなければ労働者の利益につきその保護を欠くことになるものともいい難い。
 そうすると、労災保険法第12条の8第1項第1号の療養補償給付を受ける労働者は、解雇制限に関する労働基準法第19条第1項の適用に関しては、同項ただし書が打切補償の根拠規定として掲げる同法第81条にいう同法第75条の規定によって補償を受ける労働者に含まれるものとみるのが相当である。
 したがって、労災保険法第12条の8第1項第1号の療養補償給付を受ける労働者が、療養開始後3年を経過して疾病等が治らない場合には、労働基準法第75条による療養補償を受ける労働者が上記の状況にある場合と同様に、使用者は、当該労働者につき、同法第81条の規定による打切補償の支払をすることにより、解雇制限の除外事由を定める同法第19条第1項ただし書の適用を受けることができるものと解するのが相当である。
(最二小平成27.6.8専修大学事件)

 

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