労働基準法
寄宿舎
寄宿舎と聞くと社員寮などを想定すると思いますが、労働基準法による寄宿舎は、事業の付属寄宿舎として認められるものになります。このため、常に相当人数の労働者が宿泊し、共同生活の実態があること、事業経営の必要性からその一部として設けられているように、事業との関連性があること、という要件を満たす必要があります。企業が一棟所有している不動産やマンションなどで、プライベートが確保されている寮などは該当しません。
寄宿舎生活の自治(法94条)
(寄宿舎生活の自治)第94条
Ⅰ 使用者は、事業の附属寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならない。
Ⅱ 使用者は、寮長、室長その他寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉してはならない。
1.事業附属寄宿舎の範囲
「寄宿舎」とは常態として相当人数の労働者が宿泊し、共同生活の実態を備えるものをいい、「事業に附属する」とは事業経営の必要上その一部として設けられているような事業との関連をもつことをいいます。
したがって、社宅、アパート式寄宿舎、住込み先は、事業附属寄宿舎には含まれません。
(昭和23.3.30基発508号)
2.私生活の自由
使用者は、次の(1)から(3)に掲げる行為等寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を侵す行為をしてはならない。
(1)外出又は外泊について使用者の承認を受けさせること
(2)教育、娯楽その他の行事に参加を強制すること
(3)共同の利益を害する場所及び時間を除き、面会の自由を制限すること
(寄宿舎規則4条)
3.寄宿舎生活の自由
使用者は役員の選任に関する一切の事項に干渉してはならない。例えば、使用者が役員の選任について案を作成するようなことは本条違反である。(昭和23.5.1基収1317号)
寄宿舎生活の秩序(法95条)
(寄宿舎生活の秩序)第95条
Ⅰ 事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、次の事項について寄宿舎規則を作成し、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出なければならない。これを変更した場合においても同様である。
i. 起床、就寝、外出及び外泊に関する事項
ii. 行事に関する事項
iii. 食事に関する事項
iv. 安全及び衛生に関する事項
v. 建設物及び設備の管理に関する事項
Ⅱ 使用者は、上記ⅰからⅳの事項に関する規定の作成又は変更については、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。
Ⅲ 使用者は、Ⅰの規定により届出をなすについて、Ⅱの同意を証明する書面を添附しなければならない。
Ⅳ 使用者及び寄宿舎に寄宿する労働者は、寄宿舎規則を遵守しなければならない。
寄宿舎規則の作成手続
事業附属寄宿舎に労働者を寄宿させる場合には、寄宿舎規則の作成が義務付けられており、これを作成又は変更した場合には、遅滞なく、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数以上を代表する者の同意書を添えて、所轄労働基準監督署長へ届出なければなりません。
※以下の事項に係る同意
①起床、就寝、外出及び外泊に関する事項
②行事に関する事項
③食事に関する事項
④安全及び衛生に関する事項
- 寄宿舎規則は、その作成及び届出義務が既定されているだけでなく、法第106条第2項の規定に基づき、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させることも使用者に義務づけられています。
寄宿舎の設備及び安全衛生(法96条)
(寄宿舎の設備及び安全衛生)第96条
Ⅰ 使用者は、事業の附属寄宿舎について、換気、採光、照明、保温、防湿、清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければならない。
Ⅱ 使用者がⅠの規定によって講ずべき措置の基準は、厚生労働省令(「事業附属寄宿舎規程」及び「建設業附属寄宿舎規程」)で定める。
使用者は、事業の附属寄宿舎について、
・換気、採光、照明、保温、防湿、清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置
・その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置
を講じなければなりません。
監督上の行政措置(法96条の2,3)
(監督上の行政措置)第96条の2
Ⅰ 使用者は、常時10人以上の労働者を就業させる事業、厚生労働省令で定める危険な事業又は衛生上有害な事業の附属寄宿舎を設置し、移転し、又は変更しようとする場合においては、前条[寄宿舎の設備及び安全衛生]の規定に基づいて発する厚生労働省令で定める危害防止等に関する基準に従い定めた計画を、工事着手14日前までに、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届け出なければならない。
Ⅱ 行政官庁(所轄労働基準監督署長)は、労働者の安全及び衛生に必要であると認める場合においては、工事の着手を差し止め、又は計画の変更を命ずることができる。
第96条の3
Ⅰ 労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関し定められた基準に反する場合においては、行政官庁(所轄労働基準監督署長)は、使用者に対して、その全部又は一部の使用の停止、変更その他必要な事項を命ずることができる。
Ⅱ 前項の場合において行政官庁(所轄労働基準監督署長)は、使用者に命じた事項について必要な事項を労働者に命ずることができる。
計画の届出が必要な事業
・常時10人以上の労働者を就業させる事業。
・厚生労働省令で定める危険な事業。
・衛生上有害な事業。
労働者の安全と衛生に関して定められた基準の反する場合
・工事の着手の差し止め。
・計画の変更。


