労働基準法
監督機関(労働基準監督制度)
労働基準監督制度は、行政機関による監督等を通じ、法定労働条件の履行確保を図ることを目的に1800年代にイギリスで発足したもので、その後、ILO条約等に基づき広く世界各国において設けられているものです。
日本においても、全国各地の労働基準監督署の労働基準監督官が、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法等の法律に基づき、労働者の一般労働条件や安全・健康の確保・改善のため定期的に、あるいは労働者からの賃金不払や解雇等の相談を契機として、工場や事業場等に臨検監督を実施し、関係者に尋問したり、各種帳簿、機械・設備等を検査し、法律違反が認められた場合には、事業主等に対しその改善を求めたり、行政処分として危険性の高い機械・設備等の使用を禁止する等の職務を行っています。
また、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法等には罰則が設けられており、事業主等が重大・悪質な法律違反を犯した場合には、労働基準監督官は、刑事訴訟法に基づき特別司法警察職員として犯罪捜査を行い、検察庁に送検しています。
監督機関の職員等(法97条)
(監督機関の職員等)第97条
Ⅰ 労働基準主管局(厚生労働省の内部部局として置かれる局で労働条件及び労働者の保護に関する事務を所掌するものをいう。以下同じ。)、都道府県労働局及び労働基準監督署に労働基準監督官を置くほか、厚生労働省令で定める必要な職員を置くことができる。
Ⅱ 労働基準主管局の局長(以下「労働基準主管局長」という。)、都道府県労働局長及び労働基準監督署長は、労働基準監督官をもってこれに充てる。
Ⅲ 労働基準監督官の資格及び任免に関する事項は、政令で定める。
Ⅳ 厚生労働省に、政令で定めるところにより、労働基準監督官分限審議会を置くことができる。
Ⅴ 労働基準監督官を罷免するには、労働基準監督官分限審議会の同意を必要とする。
Ⅵ Ⅳ、Ⅴに定めるもののほか、労働基準監督官分限審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
監督機関の組織
労働基準法の施行を司っている機関としては、厚生労働省に労働基準主管局として厚生労働省労働基準局が、地方には都道府県労働局及び労働基準監督署が置かれており、これらの監督機関の長は、労働基準監督官をもってこれに充てることとされている。
(労働基準監督官の任用)
政令で定められています。労働基準監督官は、国家公務員法の定めるところにより行われる労働基準監督官を採用するための試験に合格した者のうちから任用しなければならない。ただし、一般職の職員の給与に関する法律第6条第1項第1号イに規定する行政職俸給表(1)に定める職務の級が4級以上である者又は同表の適用を受け、かつ、厚生労働大臣が定める条件に該当する者を任用する場合は、この限りでない。
なお、労働基準監督官採用試験は、受験資格があります。
労働基準監督官の権限、報告等(法101条、102条、104条の2)
(労働基準監督官の権限)第101条
Ⅰ 労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。
Ⅱ Ⅰの場合において、労働基準監督官は、その身分を証明する証票を携帯しなければならない。
第102条
労働基準監督官は、労働基準法違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。
(報告等)第104条の2
Ⅰ 行政官庁は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
Ⅱ 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
労働基準監督官の権限
他の法律にも労働基準監督官の権限について記載がありますが、共通していえることは、労働基準監督官は会社が労働法に違反していないかを強制的に会社に立ち入り調査(臨検)する権限を持っているということです。
さらに、法律違反をしていることが判明すれば、司法警察官として逮捕、送検することができる権限を持っているということです。
(臨検)
「臨検」とは、労働基準監督官としての職務執行のため、労働基準法違反の有無を調査する目的で、事業場等に立ち入ることをいう。
(尋問)
「尋問」とは、ある事項について質問を発し、陳述を求めることをいう。
(報告事項)
使用者は、事業を開始した場合等一定の場合においては、遅滞なく、所定の様式により、所轄労働基準監督署長に報告しなければならない。(則57条1項)
監督機関に対する申告(法104条)
(監督機関に対する申告)第104条
Ⅰ 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
Ⅱ 使用者は、Ⅰの申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。
- 労働基準法第104条第2項の規定に違反した者に対しては、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金(労働基準法第119条第1号)
- 労働安全衛生法第97条第2項、最低賃金法第34条第2項等においても、同様に、監督官等への申告を理由とする不利益取扱いの禁止について規定されています。
(申告)
「申告」とは、行政官庁に対する一定事実の通告であり、本法の場合は、労働者が違反事実を通告して監督機関の行政上の権限の発動を促すことをいう。


