通勤災害の認定|労災保険

通勤災害の認定

通勤災害の認定に関しても、過去問に通勤災害事例から、通勤災害と認められるか否かの問題が多数出題されています。
本内容を参照として、この手の問題は正解できるようにしておいてください。通勤災害に認められるか否かは、通達で根拠が示されています。従いまして、本説明内容も通達からの情報となります。

通勤災害の範囲 (法7条2項)

通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。

ⅰ 住居就業の場所との間の往復

ⅱ 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動

ⅲ ⅰに掲げる往復先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

1.通勤の要件

通勤災害保護制度の対象とされるためには、労災保険法上の「通勤」の要件(次の⑴から⑸)を満たしていることが必要となります。

⑴ 通勤によること

⑵ 就業関連性があること

⑶ 次のいずれかに該当する移動であること

① 住居就業の場所との間の往復

② 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動

③ 住居就業の場所との間の往復先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)

⑷ 合理的な経路及び方法であること

⑸ 業務の性質を有するものでないこと

2.通勤による

通勤による」とは、通勤と相当因果関係のあること、つまり、通勤に通常伴う危険が具体化したことをいう。 (平成28.12.28基発1228第1号)

具体例

① 帰宅途中にひったくりや暴漢にあったことによる災害、通勤の途中で他人の暴行によって被った災害、通勤途中で野犬にかまれて負傷した災害、自動車通勤をする労働者が前の自動車の発進を促すためクラクションを鳴らしたことにより射殺された災害などを通勤災害としている。

② 通勤の途中において、自動車にひかれた場合、電車が急停車したため転倒して受傷した場合、駅の階段から転落した場合、歩行中にビルの建設現場から落下してきた物体により負傷した場合転倒したタンクローリーから流れ出す有害物質により急性中毒にかかった場合等、一般に通勤中に発生した災害は通勤によるものと認められる。 (平成28.12.28基発1228第1号)

③ 自殺の場合、その他被災労働者の故意によって生じた災害、通勤の途中で怨恨をもってけんかをしかけて負傷した場合などは、通勤をしていることが原因となって災害が発生したものではないので、通勤災害とは認められない。(同上)

3.就業関連性

就業に関し」とは、移動行為が業務に就くため又は業務を終えたことにより行われるものであることをいう。したがって、通勤と認められるためには、移動行為が業務と密接な関連をもって行われることが必要とされる。 (同上)

具体例

① 所定の就業日に所定の就業開始時刻を目途に住居を出て就業の場所へ向かう場合は、寝すごしによる遅刻、あるいはラッシュを避けるための早出等、時刻的に若干の前後があっても就業との関連性がある。他方、運動部の練習に参加する等の目的で、例えば、午後の遅番の出勤者であるにもかかわらず、朝から住居を出る等、所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻に会社に行く場合や第2の就業場所にその所定の就業開始時刻と著しくかけ離れた時刻に出勤する場合には、むしろ業務以外の目的のために行われるものと考えられるので、就業との関連性はないと認められる。 (同上)

なお、日々雇用される労働者については、継続して同一の事業に就業しているような場合は、就業することが確実であり、その際のいわゆる出勤は、就業との関連性が認められるし、また公共職業安定所等でその日の紹介を受けた後に、紹介先へ向かう場合で、その事業で就業することが見込まれるときも、就業との関連性を認めることができる。しかし、公共職業安定所等でその日の紹介を受けるために住居から公共職業安定所等まで行く行為は、未だ就職できるかどうか確実でない段階であり、職業紹介を受けるための行為であって、就業のための出勤行為であるとはいえない

② 業務の終了後、事業場施設内で、囲碁、麻雀、サークル活動、労働組合の会合に出席をした後に帰宅するような場合には、社会通念上就業と帰宅との直接的関連を失わせると認められるほど長時間となるような場合を除き、就業との関連性を認めても差し支えない。 (同上)

③ その他の通達では、マイカーのライト消し忘れに気づき駐車場へ引き返す途中の災害を通勤災害としたもの、食事後昼休みに妻子を自宅まで送りに向かった途中の事故を個人的行為として通勤災害と認めなかったものがある。

④ 通勤は1日について1回のみしか認められないものではないので、昼休み等就業の時間の間に相当の間隔があって帰宅するような場合には、昼休みについていえば、午前中の業務を終了して帰り、午後の業務に就くために出勤するものと考えられるので、その往復行為は就業との関連性を認められる。 (同上)

⑤ 業務終了後に業務以外の活動をして帰宅する場合については、通達では業務終了後おおむね2時間未満の組合業務や慰安会や歓送迎会などを行ってからの帰宅途中での災害については就業関連性を認め、通勤災害としている。他方、業務終了後2時間茶道の稽古を行ってからの退社、労使協議会に出席したため業務終了後6時間後に退社した場合については通勤災害と認めていない。

4.住居と就業の場所との間の往復

(1)「住居」とは、労働者が居住して日常生活の用に供している家屋等の場所で、本人の就業のための拠点となっている所をいう。ただし、ストライキ、台風等のために臨時に使用するホテル等についても居住場所の一時的移動とみなされ、そこからの通勤も通勤災害の対象となる。 (平成28.12.28基発1228第1号)

【「住居」の具体例

① 就業の必要性があって、労働者が家族の住む場所とは別に就業の場所の近くに単身でアパートを借りたり、下宿をしてそこから通勤しているような場合は、そこが住居である。さらに、通常は家族のいる所から出勤するが、別のアパート等を借りていて、早出や長時間の残業の場合には当該アパート等に泊まり、そこから通勤するような場合には、当該家族の住居とアパート等の双方が住居と認められる。 (同上)

② 「住居の一時的移動」に関しては、夫の看護のため、姑と交替で1日おきに寝泊まりしている病院から出勤する途中の災害、長女の出産に際しその家族の世話をするために泊まり込んだ長女宅から勤務先に向かう途中の災害について通勤災害とする通達がある。

③ 転任等のやむを得ない事情のために同居していた配偶者と別居して単身で生活する者(単身赴任者)や家庭生活の維持という観点から自宅を本人の生活の本拠地とみなし得る合理的な理由のある独身者にとっての家族の住む家屋(自宅)については、当該家屋と就業の場所との間を往復する行為に反復・継続性が認められるときは、住居と認めて差し支えない。「反復・継続性」とは、おおむね毎月1回以上の往復行為又は移動がある場合に認められるものである。 (平成28.12.28基発1228第1号、平成18.3.31基労管発0331001号、基労補発0331003号)

④ 「不特定多数の者の通行を予定している場所」は通常往復途上とされ、アパートの自室に入るまでの階段における転倒災害を通勤災害とし、一戸建ての屋敷構えの住居の玄関先における転倒事故は通勤災害ではないとしている。

一戸建ては屋敷構えのまでが住居,アパートは自室のドアまでが住居。
したがって、一戸建ての場合、門を出る前の庭などでけがをした場合は通勤災害とはならない。

⑤ 長時間の残業や、早出出勤及び新規赴任、転勤のため等の勤務上の事情や、交通ストライキ等交通事情、台風などの自然現象等の不可抗力的な事情により、一時的に通常の住居以外の場所に宿泊するような場合には、やむを得ない事情で就業のために一時的に居住の場所を移していると認められるので、当該場所を住居と認めて差し支えない。逆に、友人宅で麻雀をし、翌朝そこから直接出勤する場合等は、当該友人宅は就業の拠点となっているものではないので、住居とは認められない。 (平成28.12.28基発1228第1号)

(2)「就業の場所とは、業務を開始し、又は終了する場所をいうが、会議・研修などの会場や会社の行う行事の現場などもこれに含まれる。 (同上)

【「就業の場所」の具体例

① 事業場施設内の階段における転倒事故、会社が入居している雑居ビルの玄関口での負傷事故を通勤災害ではない(不特定多数の者の通行を予定した場所での災害ではなく、事業主の支配管理下における災害である)としている。

② 就業の場所には、本来の業務を行う場所のほか、物品を得意先に届けてその届け先から直接帰宅する場合のその物品の届け先、全員参加で出勤扱いとなる会社主催の運動会の会場等がこれにあたる。 (同上)

③ 外勤業務に従事する労働者で、特定区域を担当し、区域内にある数カ所の用務先を受け持って自宅との間を往復している場合には、自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所であり、最後の用務先が、業務終了の場所と認められる。(同上)

④ 派遣労働者に係る通勤災害の認定に当たっては、派遣元事業主又は派遣先事業主の指揮命令により業務を開始し、又は終了する場所が「就業の場所」となる。

したがって、派遣労働者の住居と派遣元事業場又は派遣先事業場との間の往復の行為は、一般に「通勤」となる。 (昭和61.6.30基発383号)

5.厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動…複数就業者の場合

第1の事業所、第2の事業所と住居間の移動については、従来から通勤災害保護の対象とされていましたが、第1の事業所から第2の事業所へに移動(厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動)については、平成17年の法改正により通勤災害保護の対象とすることとなりました(平成18年4月1日施行)。

 

「厚生労働省令で定める就業の場所」とは、以下の場所をいう。① 労災保険の適用事業及び労災保険に係る保険関係が成立している暫定任意適用事業に係る就業の場所

② 特別加入者(通勤災害が適用されない者を除く)に係る就業の場所

③ その他①②に類する就業の場所(具体的には、地方公務員災害補償法又は国家公務員災害補償法による通勤災害保護対象となる勤務場所又は就業の場所をいう)

事業場間移動は当該移動の終点たる事業場において労務の提供を行うために行われる通勤であると考えられ、当該移動の間に起こった災害に関する保険関係の処理については、終点たる事業場の保険関係で取り扱う。

(則6条、平成28.12.28基発1228第1号)

6.住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限。)…単身赴任者の場合

事業場と赴任先住居、帰省先住居間については、従来から通勤災害保護の対象とされていましたが、赴任先住居と帰省先住居間の移動(住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動)については、平成17年の法改正により通勤災害保護の対象とすることとされました(平成18年4月1日施行)。

「住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動」における赴任先住居とは、労働者が日常生活の用に供している家族等の場所で本人の就業のための拠点となるところを指すものである。また、通勤における帰省先住居についても、当該帰省先住居への移動に反復・継続性が認められることが必要である。また、下記(1)①一番上の●における労働者又は配偶者の父母の居住している場所についても、反復・継続性が認められる場合は「住居」と認められる。 (平成28.12.28基発1228第1号)

(1)「厚生労働省令で定める要件

当該移動が、次の①~④のいずれかに該当する労働者により行われるものであることである。 (則7条)

① 転任※に伴い、当該転任の直前の住居と就業の場所との間を日々往復することが当該往復の距離等を考慮して困難となったため住居を移転した労働者であって、次のいずれかに掲げるやむを得ない事情により、当該転任の直前の住居に居住している配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)と別居することとなったもの

※「転任」とは、企業の命を受け、就業する場所が変わることをいう。また、就業していた場所、つまり事業場自体の場所が移転した場合も該当することとする。

  • 配偶者が、要介護状態(負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいう。以下同じ。)にある労働者又は配偶者の父母又は同居の親族を介護すること。
  • 配偶者が、学校等(学校教育法に規定する学校、専修学校若しくは各種学校をいう。)に在学し、児童福祉法に規定する保育所(②イにおいて「保育所」という。)若しくは就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律に規定する幼保連携型認定こども園(②イにおいて「幼保連携型認定こども園」という。)に通い、又は職業訓練〔職業能力開発促進法に規定する公共職業能力開発施設の行う職業訓練(職業能力開発総合大学校において行われるものを含む。)をいう。〕を受けている同居の子(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子に限る。)を養育すること。
  • 配偶者が、引き続き就業すること。
  • 配偶者が、労働者又は配偶者の所有に係る住宅を管理するため、引き続き当該住宅に居住すること。
  • その他配偶者が労働者と同居できないと認められるアからエまでに類する事情

② 転任に伴い、当該転任の直前の住居と就業の場所との間を日々往復することが当該往復の距離等を考慮して困難となったため住居を移転した労働者であって、次のいずれかに掲げるやむを得ない事情により、当該転任の直前の住居に居住している子と別居することとなったもの(配偶者がないものに限る。)

  • 当該子が要介護状態にあり、引き続き当該転任の直前まで日常生活を営んでいた地域において介護を受けなければならないこと。
  • 当該子(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子に限る。)が学校等に在学し、保育所若しくは幼保連携型認定こども園に通い、又は職業訓練を受けていること。
  • その他当該子が労働者と同居できないと認められるア又はイに類する事情

③ 転任に伴い、当該転任の直前の住居と就業の場所との間を日々往復することが当該往復の距離等を考慮して困難となったため住居を移転した労働者であって、次のいずれかに掲げるやむを得ない事情により、当該転任の直前の住居に居住している当該労働者の父母又は親族(要介護状態にあり、かつ、当該労働者が介護していた父母又は親族に限る。)と別居することとなったもの(配偶者及び子がないものに限る。)

  • 当該父母又は親族が、引き続き当該転任の直前まで日常生活を営んでいた地域において介護を受けなければならないこと。
  • 当該父母又は親族が労働者と同居できないと認められるアに類する事情

④ その他上記①~③に類する労働者

(則7条、平成28.12.28基発1228第1号)

 

(2)単身赴任者に関する就業関連性の取扱い

① 帰省先住居から赴任先住居への移動の場合

(帰省先を出発する時期について)

実態等を踏まえ、業務に就く当日又は前日に行われた場合は、就業との関連性を認めて差し支えない。ただし、前々日以前に行われた場合は、交通機関の状況等の合理的理由があるときに限り、就業との関連性が認められる。

(平成28.12.28基発1228第1号)

② 赴任先住居から帰省先住居への移動の場合

(赴任先を出発する時期について)

実態等を踏まえ、業務に従事した当日又はその翌日に行われた場合は、就業との関連性を認めて差し支えない。ただし、翌々日以後に行われた場合は、交通機関の状況等の合理的理由があるときに限り、就業との関連性が認められる。

(平成28.12.28基発1228第1号)

7.合理的な経路及び方法

合理的な経路及び方法」とは、当該移動の場合に、一般に労働者が用いるものと認められる経路及び手段等をいう。 (同上)

【「合理的な経路の具体例

  • 乗車定期券に表示され、あるいは、会社に届け出ているような、鉄道、バス等の通常利用する経路及び通常これに代替することが考えられる経路等が合理的な経路となる。また、タクシー等を利用する場合に、通常利用することが考えられる経路が2、3あるような場合には、その経路は、いずれも合理的な経路となる。(同上)
  • 経路の道路工事、デモ行進等当日の交通事情により迂回してとる経路、マイカー通勤者が貸切の車庫を経由して通る経路等通勤のためにやむを得ずとることとなる経路は合理的な経路となる。さらに、他に子供を監護する者がいない共稼労働者が託児所、親せき等にあずけるためにとる経路などは、そのような立場にある労働者であれば、当然、就業のためにとらざるを得ない経路であるので、合理的な経路となるものと認められる。 (同上)
  • 交通機関のストライキのために通勤経路の逆方向に歩行中の災害、マイカー通勤者が同一方向にある妻の勤務先を経由した後忘れ物に気づき自宅に引き返す途中の災害などは「合理的な経路」にあたるとしている。
  • 特段の合理的な理由もなく著しく遠まわりとなるような経路をとる場合には、これは合理的な経路とは認められないことはいうまでもない。また、経路は、手段とあわせて合理的なものであることを要し、鉄道線路、鉄橋、トンネル等を歩行して通る場合は、合理的な経路とはならない。 (平成12.28基発1228第1号)

【「合理的な方法」の具体例

  • 鉄道、バス等の公共交通機関を利用し、自動車、自転車等を本来の用法に従って使用する場合、徒歩の場合等、通常用いられる交通方法は、当該労働者が平常用いているか否かにかかわらず一般に合理的な方法と認められる。 (同上)
  • 免許を一度も取得したことのないような者が自動車を運転する場合、自動車、自転車等を泥酔して運転するような場合には、合理的な方法と認められない。なお、飲酒運転の場合、単なる免許証不携帯、免許証更新忘れによる無免許運転の場合等は、必ずしも、合理性を欠くものとして取り扱う必要はないが、諸般の事情を勘案し、給付の支給制限が行われることがある。 (同上)

8.業務の性質を有するものでないこと

業務の性質を有するもの」とは、当該移動による災害が業務災害と解されるものをいう。具体例としては、事業主の提供する専用交通機関(マイクロバス等)を利用しての移動、突発的事故等による緊急用務のため、休日又は休暇中に呼び出しを受け、予定外に緊急出勤する場合等がある。

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