専門業務型裁量労働制(法38条の3)|労働基準法

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専門業務型裁量労働制
 
労働基準法
 法第38条の3の専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として、法令等により定められた19業務の中から、対象となる業務を労使協定で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定であらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度です。

専門業務型裁量労働制(法38条の3)

第38条の3

Ⅰ 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定(労使協定)により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を下記ⅰに掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、下記ⅱに掲げる(協定で定める時間労働したものとみなす

  1. 業務の性質上その遂行の方法大幅に当該業務に従事する労働者の裁量ゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。)
  2. 対象業務に従事する労働者労働時間として算定される時間
  3. 対象業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者具体的な指示をしないこと。
  4. 対象業務に従事する労働者労働時間の状況に応じた当該労働者健康及び福祉確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること
  5. 対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること
  6. 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

Ⅱ 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、Ⅰの協定行政官庁所轄労働基準監督署長)に届け出なければならない。

 

労働基準法施行規則

第24条の2の2

(略)

Ⅲ 法第38条の3Ⅰⅵの厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。

  1. 法第38条の3Ⅰに規定する協定(労働協約による場合を除き、労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議を含む。)の有効期間の定め
  2. 使用者は、次に掲げる事項に関する労働者ごとの記録をⅰの有効期間中及び当該有効期間の満了後3年間保存すること。

イ 法第38条の3Ⅰⅳに規定する労働者の労働時間の状況並びに当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置として講じた措置

ロ 法第38条の3Ⅰⅴに規定する労働者からの苦情の処理に関する措置として講じた措置

Ⅳ 法第38条の3Ⅱにおいて準用する法第38条の2Ⅲの規定による届出は、所轄労働基準監督署長にしなければならない。

対象業務

労働基準法施行規則第24条の222項(次の①~⑤の業務)と、同項第6号により厚生労働大臣が指定する業務を定める平成9214日労働省告示第7号(次の⑥~⑲の業務)のことです。
専門業務型裁量労働制を導入できるのは、以下の19業務(対象業務)となります。
①新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
②情報処理システムの分析又は設計の業務
③新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送番組の制作
 のための取材若しくは編集の業務
④衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
⑤放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
⑥広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(いわゆる
 コピーライターの業務)
⑦事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用する
 ための方法に関する考案若しくは助言の業務
 (いわゆるシステムコンサルタントの業務)
⑧建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務
 (いわゆるインテリアコーディネーターの業務)
⑨ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
⑩有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに
 基づく投資に関する助言の業務(いわゆる証券アナリストの業務)
⑪金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
⑫学校教育法に規定する大学における教授研究の業務
 (主として研究に従事するものに限る。)
⑬公認会計士の業務
⑭弁護士の業務
⑮建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
⑯不動産鑑定士の業務
⑰弁理士の業務
⑱税理士の業務
⑲中小企業診断士の業務

労使協定に定める事項

 専門業務型裁量労働制を採用するためには、労使協定に次の(1)~(7)の事項を定めなければならない。また、当該協定については、当該協定で定める時間が法定労働時間以下であっても、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
(1)対象業務
(2)対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される1日当たり労働時間数
(3)対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する
  労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと
(4)対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉
  を確保するための措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずること
(5)対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定める
  ところにより使用者が講ずること
(6)当該協定の有効期間の定め(当該協定が労働協約である場合を除く。)
(7)使用者は、次の事項に関する労働者ごとの記録を(6)の有効期間中及び
  当該有効期間の満了後3年間保存すること
  ①対象業務に従事する労働者の労働時間の状況並びに当該労働者の健康及び福祉を
   確保するための措置として講じた措置
  ②対象業務に従事する労働者からの苦情の処理に関する措置として講じた措置
 ※なお時間外労働・休憩時間・休日労働・深夜業に関する事項の取扱いについては、
  就業規則において定めれば足りるものですが、専門業務型裁量労働制の対象労働者
  についてその他の労働者と異なる取り扱いとする場合等は、これらについても労使
  協定で規定しておくことも可能です。

みなし労働時間

 専門業務型裁量労働時間制において労使協定で定める時間、すなわちみなし労働時間は、対象業務遂行に必要とされる時間を1日当たりの労働時間として定める必要があり、1日以外の期間、例えば1箇月の労働時間として定めることはできません。
 また、裁量労働制のみなし労働時間制度は、各日の労働時間にとらわれずに労働時間を算定するものであり、変形労働時間制との重複には、なじまないものです。
 専門業務型裁量労働時間制に係る労働時間のみなしに関する規定は、労働基準法第4章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定について適用されるものであり、同法第6章の年少者及び第6章の2の妊産婦等に関する規定における労働時間の算定には適用されませんので、例えば、同法第66条の規定により、妊産婦からの請求があった場合は、使用者は実際の労働時間が18時間及び140時間を超えないように労働させなければなりません。
 なお、労働時間のみなしに関する規定が適用される場合であっても、休憩、深夜業、休日、年次有給休暇等の規定は排除されません。

健康・福祉を確保するための措置の具体的内容

健康・福祉確保措置をどのように講ずるかを明確にするためには、対象労働者の勤務状況を把握することが必要です。使用者が対象労働者の労働時間の状況等の勤務状況を把握する方法としては、対象労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間在社し、労務を提供し得る状態にあったか等を明らかにし得る出退勤時刻又は入退室時刻の記録等によるものであることが望ましいことに留意することが必要です。 健康・福祉確保措置としては、次のものが考えられます。 □把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること □把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること □働き過ぎの防止の観点から、年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること □心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること □把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること □働き過ぎによる健康障害防止の観点から、必要に応じて、産業医等による助言、指導を受け、又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること ※また、使用者は、把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、
対象労働者への専門業務型裁量労働制の適用について必要な見直しを行うことを協定に含めることが望ましいことに留意することが必要です。

苦情処理措置

 苦情処理措置についてはその内容を具体的に明らかにすることが必要であり、
例えば、苦情の申出の窓口及び担当者、取り扱う苦情の範囲、処理の手順・方法等を明らかにすることが望ましいことに留意することが必要です。この際、 使用者や人事担当者以外の者を申出の窓口とすること等の工夫により、対象労働者が苦情を申し出やすい仕組みとすることや、取り扱う苦情の範囲については対象労働者に適用される評価制度、賃金制度及びこれらに付随する事項に関する苦情も含むことが望ましいことに留意して下さい。

・事業場外労働のみなし労働時間制に係る労使協定は、労使協定で定める時間が法定労働時間以下である場合は届け出なくてもよいが、専門業務型裁量労働制に係る労使協定は、当該協定で定める時間の長さにかかわらず、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。

・派遣先における派遣労働者の対象業務に係る労働は、派遣元の労使協定で定める時間労働したものとみなされることになる。

#労働基準法 #専門業務型裁量労働制

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