企画業務型裁量労働制(法38条の4)|労働基準法

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企画業務型裁量労働制

 

労働基準法
法第38条の4の企画業務型裁量労働制とは、企業の各部署において一定範囲の業務に従事する労働者について、業務の遂行手段や時間配分の決定などを労働者の裁量に委ね、成果をより重視することで業務効率や生産性の向上を図る制度です。労使委員会で決議した時間を労働したとみなすことができます。
企画業務型裁量労働制は、裁量労働制の中でも一定範囲のホワイトカラー労働者を対象とした、労働者が働き方を決められる制度です。政府の働き方改革の一環としてもさらなる活用が期待されていたものですが、運用を誤ると、長時間労働や残業代の未払いなどの問題を引き起こします。
ちなみに、企画業務型裁量労働制については、法改正により法人向けの提案営業(ソリューション型営業)にも適用拡大となる予定でしたが、「働き方改革推進法案」に盛り込まれなかったため、次回法案が国会に提出される2020年以降となる見通しのようです。

企画業務型裁量労働制(法38条の4)

 

第38条の4

Ⅰ 賃金労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会使用者及び当該事業場の労働者を代表する者構成員とするものに限る。)(労使委員会)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議行政官庁所轄労働基準監督署長)に届け出た場合において、Ⅱに掲げる労働者の範囲に属する労働者を当該事業場におけるⅰに掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、ⅲに掲げる時間労働したものとみなす。

  1. 事業の運営に関する事項についての企画立案調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務(以下この条において「対象業務」という。)
  2. 対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であって、当該対象業務に就かせたときは当該決議で定める時間労働したものとみなされることとなるものの範囲
  3. 対象業務に従事するⅱに掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間として算定される時間
  4. 対象業務に従事するⅱに掲げる労働者の範囲に属する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉確保するための措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
  5. 対象業務に従事するⅱに掲げる労働者の範囲に属する労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
  6. 使用者は、この項の規定によりⅱに掲げる労働者の範囲に属する労働者を対象業務に就かせたときはⅲに掲げる時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかった当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
  7. 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項

Ⅱ 前項の委員会(労使委員会)は、次のⅰからⅲに適合するものでなければならない。

  1. 当該委員会委員の半数については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に厚生労働省令で定めるところにより任期を定めて指名されていること。
  2. 当該委員会議事について、厚生労働省令で定めるところにより、議事録作成され、かつ、保存されるとともに、当該事業場労働者に対する周知が図られていること。
  3. ⅱに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める要件

Ⅲ 厚生労働大臣は、対象業務に従事する労働者適正な労働条件の確保を図るために、労働政策審議会意見を聴いて、Ⅰⅰからⅵに掲げる事項その他同項の委員会決議する事項について指針を定め、これを公表するものとする。

Ⅳ Ⅰの規定による届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、定期的に、Ⅰⅳに規定する措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならない。

(略)

労働基準法施行規則

第24条の2の3

Ⅰ 法第38条の4第1項の規定による届出は、所轄労働基準監督署長にしなければならない。

Ⅱ 法第38条の4第1項の規定は、法第四章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定について適用する。

Ⅲ 法第38条の4第1項第7号の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。

  1. 法第38条の4第1項に規定する決議の有効期間の定め
  2. 使用者は、次に掲げる事項に関する労働者ごとの記録を前号の有効期間中及び当該有効期間の満了後3年間保存すること。

イ 法第38条の4第1項第4号に規定する労働者の労働時間の状況並びに当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置として講じた措置

ロ 法第38条の4第1項第5号に規定する労働者からの苦情の処理に関する措置として講じた措置

ハ 法第38条の4第1項第6号の同意

 

第24条の2の4

Ⅰ 法第38条の4第2項第1号の規定による指名は、法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者以外の者について行わなければならない。

Ⅱ 法第38条の4第2項第2号の規定による議事録作成及び保存については、使用者は、労使委員会の開催の都度その議事録を作成して、これをその開催の日から起算して3年間保存しなければならない。

Ⅲ 法第38条の4第2項第2号の規定による議事録の周知については、使用者は、労使委員会の議事録を、次に掲げるいずれかの方法によって、当該事業場の労働者に周知させなければならない。

  1. 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
  2. 書面を労働者に交付すること。
  3. 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

Ⅳ 法第38条の4第2項第3号の厚生労働省令で定める要件は、労使委員会招集定足数議事その他労使委員会の運営について必要な事項に関する規程が定められていることとする。

Ⅴ 使用者は、前項の規程の作成又は変更については、労使委員会の同意を得なければならない。

Ⅵ 使用者は、労働者が労使委員会の委員であること若しくは労使委員会の委員になろうとしたこと又は労使委員会の委員として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

第24条の2の5

  1. 法第38条の4第4項の規定による報告は、同条第1項に規定する決議が行われた日から起算して6箇月以内1回、及びその後1年以内ごと1回、所轄労働基準監督署長にしなければならない。
  2. 法第38条の4第4項の規定による報告は、同条第1項第4号に規定する労働者の労働時間の状況並びに当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置の実施状況について行うものとする。

企画業務型裁量労働制のあらまし

(1)労働基準法で認められる事業場とは、(2)の対象業務に存在し次に該当するいずれかの事業場であること(対象事業場
  • 本社・本店
  • 当該事業場の属する企業等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場
  • 本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく独自に、事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店
※ 個別の製造等の作業や当該作業に係る工程管理のみを行っている事業場や本社・本店又は支社・支店等である事業場の具体的な指示を受けて、個別の営業活動のみを行っている事業場は、企画業務型裁量労働制を導入することはできません。
(2)労働基準法で認められる業務とは次の事項のすべてに該当する業務であること(対象業務
  • 事業の運営に関する事項(対象事業場の属する企業・対象事業場に係る事業の運営に影響を及ぼす事項)についての業務であること
  • 企画、立案、調査及び分析の業務(企画、立案、調査及び分析という相互に関連し合う作業を組み合わせて行うことを内容とする業務であって、部署が所掌する業務ではなく、個々の労働者が相当する業務)であること
  • 当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務であること
  • 当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること
(3)労働基準法で認められる労働者とは、次の何れにも該当する労働者の範囲に属する労働者であること(対象労働者の範囲
  • 対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者
  • 対象業務に常態として従事している者
 以上のとおり、対象事業場である事業場の対象業務である業務に対象労働者の範囲にある労働者を就かせたときに、現実の労働時間にかかわらず、その事業における労使委員会で決議した時間を労働したものとみなすことができます。
すなわち、企画業務型裁量労働時間制のみなし労働時間は、
労働基準法第4章の労働時間に関する規定の適用に係る労働時間の算定について適用されます。

採用要件

 企画業務型裁量労働制を採用するためには、事業場に労使委員会を設置し、当該労使委員会がその委員の5分の4以上の多数による議決により次の事項に関する決議をし、かつ、使用者が当該決議所轄労働基準監督署長届け出ることが必要です。
 労使委員会とは、賃金、労働時間その他の労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し意見を述べ、使用者及びその事業場の労働者を代表する者が構成員となっている委員会です。
(1)対象業務
(2)対象労働者の範囲
(3)対象労働者の1日当たり労働時間数
(4)対象労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること
(5)対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること
(6)使用者は、対象労働者を対象業務に就かせたときは、当該決議で定める時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかった当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと
(7)その他厚生労働省令定める次の①②の事項
 ①決議の有効期間の定め
 ②使用者は、次に掲げる事項に関する労働者ごとの記録を①の有効期間中及び当該有効期間の満了後3年間保存すること
 ア (4)の対象労働者の労働時間の状況並びに当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置として講じた措置
 イ (5)の対象労働者からの苦情の処理に関する措置として講じた措置
 ウ (6)の同意 

決議の方法

 「委員の5分の4以上の多数による議決」とは、労使委員会に出席した委員の5分の4以上の多数による議決で足りる。(平成12.1.1基発1号、平成15.12.26基発1226002号)

留意事項

 企画業務型裁量労働時間制の対象労働者については、業務の遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ね、使用者が具体的な指示をしないこととなるが、使用者は、このために当該対象労働者について、労働者の生命、身体及び健康を危険から保護すべき義務(いわゆる安全配慮義務)を免れるものではないことに留意することが必要である。

制度を実施する上の必要なこと

①対象労働者の健康・福祉確保の措置を実施すること
②対象労働者の苦情処理の措置を実施すること
③不同意労働者に不利益な取扱いをしないこと
④①の実施状況を定期的に所轄労働基準監督署長に報告すること

報告

 法第38条の4第1項の規定のよる労使委員会の決議の届出をした使用者は、当該決議が行われた日から起算して6箇月以内ごとに1回*、次の事項を行政官庁(所轄労働基準監督署長)に報告しなければならない。
(1)対象労働者の労働時間の状況
(2)対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置の実施状況
* 施行規則第24条の2の5第1項には、「当該決議が行われた日から起算して6か月以内に1回、及びその後1年以内ごとに1回」と規定されていますが、施行規則附則第66条の2において、当分の間、「6箇月以内ごとに1回」と読み替えられています。

労使委員会の委員の指名

 労使委員会の委員の指名は、法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者以外の者について行わなければならない。(則24条の2の4.1項)
委員会の委員の半数については、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に任期を定めて指名されていること

議事録の作成及び保存

 労使委員会の議事録の作成及び保存については、使用者は、労使委員会の開催の都度その議事録を作成して、これをその開催の日(決議が行われた会議の議事録にあっては、当該決議に係る書面の完結の日)から起算して3年間保存しなければならない。(則24条の2の4.2項)
委員会の議事については、議事録が作成・保存されるとともに、労働者に対する周知が図られていることも必要です。

労使委員会の決議の効果

 労使委員会において、次の規定(特定条項)について、当該規定に係る労使協定に代えて委員の5分の4以上の多数による議決による決議(以下「協定代替決議」という。)を行うことができます。
 ここで問題になるのは、労使委員会と既存の労働組合との関係についてですが、労働組合固有の団体交渉権は、労使委員会が設置されても当然何ら影響を受けません。
 使用者は、両者の関係を明確にするため、労使委員会を設置する際には、労働組合と事前の協議の上で、労使委員会が調査審議する事項の範囲を労使委員会の運営規定で定めておくことが適当である。
(1)1箇月単位の変形労働時間制
(2)フレックスタイム制
(3)1年単位の変形労働時間制(対象期間を1箇月以上の期間に区分する場合の特例に係る「同意」を含む。)
(4)1週間単位の非定型的変形労働時間制
(5)休憩の一斉付与の適用除外
(6)時間外及び休日の労働
(7)代替休暇
(8)事業場外労働又は専門業務型裁量労働のみなし労働時間制
(9)時間単位年休
10)年次有給休暇の計画的付与
11)年次有給休暇の賃金
協定代替決議の中で、労使協定であれば行政官庁に届出を要するもののうち、次のものについては届出を要しない。
(1)1箇月単位の変形労働時間制
(2)フレックスタイム制(清算期間1箇月超)
(3)1年単位の変形労働時間制
(4)1週間単位の非定型的変形労働時間制
(8)事業場外労働又は専門業務型裁量労働のみなし労働時間制
協定代替決議のうち「時間外及び休日の労働(36協定)に係るものについてのみ、所轄労働基準監督署長への届出が必要である(労働時間等設定改善委員会による協定代替決議の場合も同様)

#労働基準法 #企画業務型裁量労働制
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