労働基準法
法令等の周知義務
労働者が知らない(無知)ことを利用して、使用者(会社)による不当な取り扱いを防止することを目的とした規定です。労働者の権利及び義務をあらかじめ労働者に周知し、適正な労務管理と紛争の防止のため、法令の要旨、就業規則、各種労使協定などを掲示、備え付け、書面の交付等によって周知しなければなりません。
法令等の周知義務(法106条)
(法令等の周知義務)第106条
Ⅰ 使用者は、労働基準法及び労働基準法に基づく命令の要旨、就業規則、労働基準法に基づく労使協定並びに第38条の4第1項及び同条第5項(第41条の2第3項において準用する場合を含む。)並びに第41条の2第1項[企画業務型裁量労働制及び高度プロフェッショナル制度]に規定する労使委員会の決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。
Ⅱ 使用者は、労働基準法及び労働基準法に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。
1.労働基準法に基づく命令
労働基準法施行規則、年少者労働基準規則、女性労働基準規則、事業附属寄宿舎規程、建設業附属寄宿舎規程等である。
2.厚生労働省令で定める方法
周知の方法として「厚生労働省令で定める方法」とは次に掲げる方法である。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
- 書面を労働者に交付すること。
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。(則52条の2)
3.周知事項
使用者は、次の事項を労働者に周知しなければなりません。
- 労働基準法及び同法に基づく命令等の要旨
- 就業規則
- 労使協定
- 貯蓄金管理に関する協定(第18条)
- 購買代金などの賃金控除に関する協定(第24条)
- 1力月単位の変形労働時間制に関する協定(第32条の2)
- フレックスタイム制に関する協定(第32条の3)
- 1年単位の変形労働時間制に関する協定(第32条の4)
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制に関する協定(第32条の5)
- 一斉休憩の適用除外に関する協定(第34条)
- 時間外労働・休日労働に関する協定(第36条)
- 代替休暇付与に関する労使協定(第37条第3項)
- 事業場外労働に関する協定(第38条の2)
- 専門業務型裁量労働に関する協定(第38条の3)
- 時間単位年休に関する労使協定(第39条第4項)
- 年次有給休暇の計画的付与に関する協定(第39条第6項)
- 年次有給休暇取得日の賃金を健康保険の標準報酬日額で支払う制度に関する協定 (第39条第7項ただし書)
- 企画業務型裁量労働制にかかる労使委員会の決議内容(第38条の4第1項)
4.労使委員会の上記の1力月単位の変形労働時間制に関する協定(第32条の2)~年次有給休暇取得日の賃金を健康保険の標準報酬日額で支払う制度に関する協定 (第39条第7項ただし書)の協定に代わる決議の内容(第38条の4第5項)
4.労使委員会の決議の周知
労使委員会の決議については、法第106条第1項に基づき、使用者は対象労働者に限らず労働者に周知しなければならない。 (平成12.1.1基発1号)
<判例>
(就業規則の効力)
就業規則は、それが合理的な労働条件を定めているものである限り、経営主体と労働者との間の労働条件はその就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるので、当該事業場の労働者は、就業規則の存在及び内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然にその適用を受ける。(最大判昭和43.12.25秋北バス事件)
(周知義務)
就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きがとられていることを要する。
(最二小平成15.10.10フジ興産事件)
要旨のみの周知でよいものと全文を周知させる必要があるものを整理すると以下の通りとなる。
|


