社会保険との併給調整
「同一の事由」(障害又は死亡)で労災保険の年金給付と社会保険(国民年金・厚生年金保険)が支給される場合は、労災保険の年金給付が減額されます。
年金間の調整 (法別表第1、令2条、4条、6条、法14条2項)
Ⅰ 同一の事由により、障害補償年金若しくは傷病補償年金又は遺族補償年金と厚生年金保険法の規定による障害厚生年金及び国民年金法の規定による障害基礎年金(同法第30条の4[20歳前傷病による障害基礎年金]の規定による障害基礎年金を除く。)又は厚生年金保険法の規定による遺族厚生年金及び国民年金法の規定による遺族基礎年金若しくは寡婦年金とが支給される場合にあっては、年金たる保険給付の額は、下表の政令で定める率を乗じて得た額(その額が、政令で定める額を下回る場合には、当該政令で定める額)とする。
障害厚生年金 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金及び 障害基礎年金 | |
障害補償年金 傷病補償年金 | 0.83 0.88 | 0.88 | 0.73 |
遺族厚生年金 | 遺族基礎年金又は 寡婦年金 | 遺族厚生年金及び 遺族基礎年金 | |
遺族補償年金 | 0.84 | 0.88 | 0.80 |
Ⅱ 休業補償給付を受ける労働者が同一の事由について厚生年金保険法の規定による障害厚生年金又は国民年金法の規定による障害基礎年金を受けることができるときは、当該労働者に支給する休業補償給付の額は、上記に定める率のうち傷病補償年金について定める率を乗じて得た額(その額が政令で定める額を下回る場合には、当該政令で定める額)とする。
【通勤災害に係る給付と社会保険との調整】
障害年金、傷病年金、遺族年金、休業給付についても同様の調整が行われる。 (法22条の3,3項、法23条2項、法22条の4,3項、法22条の2,2項)
調整の方法
同一の事由により労災保険の年金給付と社会保険の年金給付が併給される場合には、社会保険の年金給付は全額支給されるが、労災保険の年金給付には一定の率(調整率)が乗じられ、減額支給される。また、休業(補償)給付についても、傷病(補償)年金について定められる調整率が乗じられ減額支給されます。
同一の事由により支給される給付
「同一の事由により支給される給付」は、受給権者が異なっていても併給調整の対象となる。例えば、労働者の死亡により残された生計維持関係のある遺族が、厚生労働省令で定める障害者である55歳未満の夫と18歳の年度末前の子である場合、遺族(補償)年金の受給権者は当該夫、遺族厚生年金の受給権者は当該子となるが、このような場合であっても、夫の遺族(補償)年金が減額支給されます。
国民年金法第30条の4[20歳前傷病による障害基礎年金]の規定による障害基礎年金との調整
福祉的な意味合いで支給される20歳前傷病による障害基礎年金は、何らかの公的制度から年金等が受給できる場合には、支給されないこととされている。したがって、労災保険の年金給付が支給される場合には、労災保険の年金給付は減額されずに支給されます。
(国年法36条の2,1項1号、国年令4条の8)
「政令で定める額」が調整後の労災保険の支給額になる場合
次図②のように「調整後の労災保険の年金額と社会保険の年金額の合計」が調整前の労災保険の年金額よりも少なくなってしまうときは、次図③のように「政令で定める額(=調整前の労災保険の年金額から社会保険の年金額を控除した額)」が労災保険の年金支給額となる。なお、休業(補償)給付の場合は、「調整前の休業(補償)給付の額から併給される社会保険の年金額を365で除して得た額を減じた額」が「政令で定める額」となります。
一時金間の調整 (厚年法56条3号)
障害手当金との調整
同一の事由について、労災保険の障害(補償)給付と障害手当金が併給される場合には、障害(補償)給付が全額支給され、障害手当金は支給されません。
(労災認定された傷病等に対して労災保険以外から給付等を受けていた場合における保険者等との調整について)
労災認定された傷病等に関して過去に健康保険から給付を受けていた労働者への労災保険給付の取扱いについては、労災認定された傷病等に対し、過去に給付を行った健康保険等の保険者(後期高齢者医療広域連合を含む。以下「保険者」という。)及び石綿健康被害救済制度を運用する独立行政法人環境再生保全機構(以下「機構」という。)への給付の返還に係る被災労働者等の負担軽減を図るため、保険者及び機構への返還を要する金額相当分の労災保険給付の受領について、当該被災労働者等から保険者又は機構に委任する旨の申し出があり、健康保険等の返還通知書等を添えて労災請求があった場合に限り、保険者又は機構から示された金融機関の口座に、療養の費用の振込みを行う方法により調整を行って差し支えないこととする。
(補足)
上記の場合、誤って健康保険等から受給した保険給付相当額を健康保険等の保険者に返還し、改めて労災保険から保険給付を受給することとされていたが、当該返還に係る労働者の負担を考慮し、労災保険と健康保険等の間で、直接調整することも可能になった。
( 平成29.2.1基補発0201第1号)


