労働時間の定義(基礎を覚える)

労働基準法
 これから学習する労働時間について触れたいと思います。労働時間とは、簡単に言えば「仕事をしている時間」で、皆様も想像するに会社の勤務時間が決まっており、その時間帯であるという認識だと思います。しかし、具体的にどういった時間が労働時間にあたるのかをしっかり把握している方は少ないのではないでしょうか。今回は、労働時間に含まれるものと含まれないものについて解説します。キーは「指揮命令下」となります。

労働時間の定義

 

労働基準法第32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。(下記判例参照)

労基法上の労働者とは

労働基準法上の労働者とはどのような人かというと、労働基準法第9条によれば、「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と定義されています。
上述の条文で、労働者の要件の1つである事業に「使用される」をどのように解釈するかについては、種々の見解がありますが、昭和60年12月19日労働基準法研究会報告「労働基準法の『労働者』の判断基準について」では、「指揮監督下の労働」であるかどうか、支払われた報酬が「労働の対価」であるかどうかという2つによって判断される。この2つを「使用従属性」と呼ぶ(60年報告)となっています。
それでは「労働」とはどのような定義なのでしょうか?

1.労働とは

 「労働」とは、一般的に、使用者の指揮監督のもとにあることをいい、必ずしも現実精神又は肉体活動させていることを要件とはしない

2.労働時間の考え方

  • 労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる
  • 例えば、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間に該当する。

3.労働時間に含まれるものの通達

「使用者の指揮命令下に置かれている時間」かどうかがキーとなります。

手待時間

 貨物取扱いの事業場において、貨物の積込係が、貨物自動車の到着を待機して身体を休めている場合とか、運転手が2名乗り込んで交替で運転に当たる場合において運転しない者が助手席で休息し、又は仮眠しているときであってもそれは労働であり、その状態にある時間(手待時間)は労働時間である (昭和33.10.11基収6286号)

昼休み中の来客当番

 休憩時間に来客当番として待機させていれば、それは労働時間である。(昭和23.4.7基収1196号、平成11.3.31基発168号)

安全衛生教育の時間

 労働安全衛生法第59条および第60条の安全衛生教育は、労働者がその業務に従事する場合の労働災害の防止を図るため、事業者の責任において実施されなければならないものであり、したがって、安全衛生教育については所定労働時間内に行うのを原則とする。また、安全衛生教育の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当該教育が法定時間外に行われた場合には、当然割増賃金が支払わなければならないものである。(昭和47.9.18基発602号)

健康診断の受診時間

 健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払については、労働者一般に対して行われる、いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施業務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましい。
 特定の有害な業務に従事する労働者について行われる健康診断、いわゆる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行わるのを原則とする。また、特殊健康診断の実施に要する時間は労働時間と解されるので、当然健康診断が時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものである。(昭和47.9.18基発602号)

安全・衛生委員会の会議開催時間

 安全・衛生委員会の会議の開催に要する時間は労働時間と解される。従って、当該会議が法定時間外に行われて場合には、それに参加した労働者に対し、当然、割増賃金が支払われなければならないものである。(昭和47.9.18基発602号)

黙示の指示による労働時間

 使用者の明白な超過勤務の指示により、又は使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となる。(昭和25.9.14基収2983号)

訪問介護労働者の移動時間

 移動時間とは、事業場、集合場所、利用者宅の相互間を移動する時間をいい、この移動時間については、使用者が業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当するものである。(平成16.8.27基発0827001号)

労働時間の適性の把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(抜粋)

(1)趣旨

 労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有している。
 しかしながら、現状をみると、労働時間の把握に係る自己申告制(労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより労働時間を把握するもの。以下同じ)の不適正な運用等に伴い、同法に違反する過重な長時間労働や割増賃金の未払いといった問題が生じているなど、使用者が労働時間を適切に管理していない状況もみられるところである。
 このため、本ガイドラインでは、労働時間の適性な把握のために使用者が講ずべき措置を具体的に明らかにする。

(2)適用の範囲

  対象となる事業場は、労働基準法のうち労働時間に係る規定(労働基準法第4章)が適用される全ての事業場です。対象となる労働者は、労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除くすべての労働者です。

  • 労働基準法第41条に定める者には、例えば、管理監督者が挙げられます。管理・監督者とは、一般的には部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、役職名にとらわれず職務の内容等から実態に即して判断されます。
  • みなし労働時間制とは、
  1. 事業場外で労働する者であって、労働時間の算定が困難なもの(労働基準法第38条の2)
  2. 専門業務型裁量労働制が適用される者(労働基準法第38条の3)
  3. 企画業務型裁量労働制が適用される者(労働基準法第38条の4)をいいます。
  • ⅲ.本基準が適用されない労働者についても、健康確保を図る必要がありますので、使用者は過重な長時間労働を行わせないようにするなど、適正な労働時間管理を行う責務があります。
(3)労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置

①始業・終業時刻の確認・記録

使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。

始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

 使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
  • 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
  • タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

③自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

上記②の方法によることなく、自己申告制により行わざるを得ない場合、以下の措置を講ずること。
  • 自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
  • 実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
  • 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。
  • 自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。
  • 自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。 また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。 さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。

賃金台帳の適正な調製

 使用者は、労働基準法第108条及び同法施行規則第54条により、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。
 また、賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、同法第120条に基づき、30万円以下の罰金に処されること。

労働時間の記録に関する書類の保存

 使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存しなければならないこと。

労働時間を管理する者の職務

事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。

労働時間等設定改善委員会等の活用

使用者は、事業場の労働時間管理の状況を踏まえ、必要に応じ労働時間等設定改善委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握の上、労働時間管理上の問題点及びその解消策等の検討を行うこと。

参考通達

坑内労働者の入浴時間

 坑内労働者の入浴時間は通常労働時間に算入されない。(昭和23.10.30基発1575号)

就業時間外の教育訓練

 労働者が使用者の実施する教育訓練に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない(昭和26.1.20基収2875号、昭和63.3.14基発150号、婦発47号)

判例

労働時間の概念

 労働基準法第32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約就業規則労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではないと解するのが相当である。そして、労働者が、就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為を所定労働時間外において行うものとされている場合であっても、当該行為は、特別の事情がない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法上の労働時間に該当すると解される。(最一小平成12.3.9三菱重工業長崎造船所事件)

仮眠時間と休憩時間

 労働基準法第32条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない仮眠時間(以下「不活動仮眠時間」という。)が労働基準法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである。(最一小平成14.2.28大星ビル管理事件)

労働時間に含まれるか否かの具体例(主なもの)

労働時間に含まれる
労働時間に含まれない
自由利用が保障されていない場合の休憩時間、出張旅行時間、事業場間の移動時間
・手待時間
・受講義務のある教育訓練時間
・安全衛生教育時間
・安全・衛生委員会の会議時間
・特殊健康診断の受診時間
自由利用が保障されている休憩時間、出張旅行時間、事業場間の移動時間
・受講義務のない教育訓練時間
・一般健康診断や二次健康診断の受診時間
・面接指導や特定保健指導を受ける時間

 

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