1箇月単位の変形労働時間制(法第32条の2)

 

変形労働時間制
 
労働基準法
今回は、変形労働時間制について学習します。前々回「法定労働時間」を学習しましたが、その特例として、変形労働時間制を紹介しました。
変形労働時間制とは、労働時間を月単位・年単位で調整することで、繁忙期等により勤務時間が増加しても時間外労働としての取扱いを不要とする労働時間制度です。
ただし、変形労働時間制の場合でも法律で規定された労働時間を超えた分は残業代として支払わなければなりません。
変形労働時間制は繁忙期や閑散期など、業務にかかる時間が月や週ごとにバラつきがある場合に労働時間を調整できることから、昨年度自民党部会は、授業のない夏休み期間に合わせて教員が長期休暇を取るなどしてトータルの労働時間を削減する変形労働時間制の導入を提言。前提として、夏休みなどの間の研修や部活動のあり方も見直すべきだとしている。

変形労働時間制

 変形労働時間制は、一定の条件のもとで、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができるしくみであり、労働者の生活設計を損なわない範囲内において労働時間を弾力化し、週給2日性の普及、年間休日日数の増加、業務の繁閑に応じた労働時間の配分等を行うことによって労働時間を短縮することを目的として設けられてものである。
 変形労働時間制には、次の4種類がある。
  1. 1箇月単位の変形労働時間制
  2. フレックスタイム制
  3. 1年単位の変形労働時間制
  4. 1週間単位の非定型的変形労働時間制
1箇月単位の変形労働時間制
 

1箇月単位の変形労働時間制(法第32条の2)

平成29年就労条件総合調査によると、1箇月単位の変形労働時間制を採用している企業は、全体の20.9%である。種類別採用企業の割合では、医療、福祉(46.4%)、電気・ガス・熱供給・水道業(45.2%)、宿泊業、飲料サービス業(38.9%)と採用割合が高くなっている。

32条の2 
Ⅰ 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定(労使協定)により、又は就業規則その他これに準ずるものにより、1箇月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が前条第1項(40時間特例事業の場合は44時間。以下同じ)の労働時間を超えない定めをしたときは、同条の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において同項の労働時間(40時間)又は特定された日において同条第2項の労働時間(8時間)を超えて、労働させることができる。
Ⅱ 使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定行政官庁所轄労働基準監督署長)に届け出なければならない。
労働基準法施行規則 第12条の2の2
 法第32条の2第1項の協定(労働協約による場合を除き、労使委員会の決議及び労働時間等設定改善委員会の決議を含む。)には、有効期間定めをするものとする。
労使の話合いによる制度の導入を促進するため、また、1箇月単位の変形労働時間制以外の変形労働時間制の導入要件は労使協定により定めることとされていることも勘案し、就業規則その他これに準ずるものによる定め又は労使協定による定めのいずれによっても導入できることとしたものであること。
なお、労使協定により定めるか就業規則その他これに準ずるものにより定めるかについては、最終的には使用者が決定できるものであること。

採用要件

 1箇月単位の変形労働時間制を採用するためには、労使協定又は就業規則その他これに準ずるものにおいて、次の事項を定める。

(1)変形期間(1箇月以内の一定期間)

 必ずしも「1箇月」である必要はなく、例えば「15日」や「2週間」なども可能である。

(2)変形期間の起算日

 変形期間をいつから開始するかについても定める必要がある。(則12条の2.1項)

(3)変形期間を平均し1週間当たりの労働時間が週法定労働時間を超えない定め

 変形期間における所定労働時間の合計を次の式によって計算される時間の範囲内とすることが必要である。
1週間の法定労働時間*×変形期間の暦日数/7日
原則40時間・特例事業44時間(昭和63.1.1基発1号、平成9.3.25基発195号)
<変形期間が1か月の場合>
1か月の暦日数が  31日の場合 177.1時間
30日の場合 171.4時間
29日の場合 165.7時間
28日の場合 160.0時間

(4)変形期間における各日、各週の所定労働時間

 就業規則においては、各日の労働時間の長さだけではなく、始業及び終業時刻も定める必要がある。

労使協定

(1)所轄労働基準監督署長届け出なければならない。
(2)有効期間を定めなければならない(労働協約である場合を除く)

就業規則その他これに準ずるもの(就業規則等)

 常時10人以上の労働者を使用する事業は、法第89条で就業規則の作成義務があるので、1箇月単位の変形労働時間制をとる場合(労使協定を締結する場合を除く)は、必ず就業規則で定めなければならない。したがって、「その他これに準ずるもの」とは、法第89条の規定によって就業規則を作成する義務のない常時10人未満の労働者を使用する事業で1箇月単位の変形労働時間制を採用する場合を予定したものである。
 なお、「その他これに準ずるもの」についても、就業規則と同様に労働者に周知するように定められており、周知しない場合は「就業規則に準ずる定め」とは認められない。(昭和63.1.1基発1号、平成9.3.25基発195号、平成11.3.31基発168号)

特定された日又は週

 「特定された日又は週」とは、就業規則等によってあらかじめ8時間を超えて労働させることが定められている日又は1週間の法定労働時間を超えて労働させることが具体的に定められている週の意味である。(昭和23.7.15基発1690号)

労働時間の特定

 1箇月単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定による定め又は就業規則その他これに準ずるものにより、変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要し、変形期間を平均し、週40時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しない。(昭和63.1.1基発1号、平成9.3.25基発195号、平成11.3.31基発168号)

判例

労働基準法第32条の2の定める1箇月単位の変形労働時間制は、使用者が、就業規則その他これに準ずるものにより、1箇月以内の一定の期間(単位期間)を平均し、1週間当たりの労働時間が週の法定労働時間を超えない定めをした場合においては、法定労働時間の規定にかかわらず、その定めにより、特定された週において1週の法定労働時間を、又は特定された日において1日の法定労働時間を超えて労働させることができるというものであり、この規定が適用されるためには、単位期間内の各週、各日の所定労働時間を就業規則等において特定する必要があるものと解される。原審は、労働協約又は改正就業規則において、業務の都合により4週間ないし1箇月を通じ、1週平均38時間以内の範囲内で就業させることがある旨が定められていることをもって、上告人らについて変形労働時間制が適用されていたとするが、そのような定めをもって直ちに変形労働時間制を適用する要件が具備されているものと解することは相当ではない。(最一小 平成14.2.28大星ビル管理事件)

特別な配慮を要する者に対する配慮

 使用者は、1箇月単位の変形労働時間制1年単位の変形労働時間制又は1週間単位の非定型的変形労働時間制の下で労働者を労働させる場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をしなければならないこととされている。その場合に、法第67条[育児時間]の規定は、あくまでも最低基準を定めたものであるので、法第66条第1項[妊産婦の変形労働時間制の制限]の規定による請求をせずに変形労働時間制の下で労働し、1日の所定労働時間が8時間を超える場合には、具体的状況に応じ法定以上の育児時間を与える等の配慮をすることが必要である。平成11.1.29基発45号)

参考通達

列車等乗務員の予備勤務者の労働時間

使用者は、法別表第1第4号に掲げる事業[運輸交通業]において列車、気動車又は電車に乗務する労働者で予備の勤務に就くものについては、1箇月以内の一定の期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えない限りにおいて、法第32条の21項[1か月単位の変形労働時間制]
の規定にかかわらず、1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させることができる。
(則26条)
★予備勤務者の特例は、「航空機」に乗務する者については適用されない。

労働時間の特定の程度

 勤務ダイヤによる1箇月単位の変形労働時間制を採用する場合、各人ごとに、各日、各週の労働時間を就業規則においてできる限り具体的に特定すべきものであるが、業務の実態から月ごとに勤務割を作成する必要がある場合には、就業規則において各直勤務の始業終業時刻、各直勤務の組合せの考え方、勤務割表の作成手続及びその周知方法等を定めておき、それにしたがって各日ごとの勤務割は、変形期間の開始前までに具体的に特定することで足りる。(昭和63.3.14基発150号)

 

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