労働基準法
均等待遇は、使用者が、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをすることを禁止した規定です。本条は、憲法で規定している法の下の平等を受けて、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由とした労働条件についての差別的取扱いを禁止したものです。
均等待遇(法3条)
趣旨
法第3条は、国籍、信条又は社会的身分を理由とする労働者の差別待遇を禁止したものである。日本国憲法第14条第1項は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と規定しているが、本条は、この日本国憲法の理念に則り、労働条件について平等の原則を規定したものである。
*門地:人の出生によって当然に生じる社会的地位のことで,いわゆる「家柄」とか「生れ」がこれにあたる。
信条又は社会的身分
「信条」とは、特定の宗教的もしくは政治的信念をいい、「社会的身分」とは、生来の身分をいう。
本来は宗教上の信仰を意味していましたが、通説では、広く思想上の主義・世界観を含むとされています。
「生来の身分」 とは、昔、ある特定の地域に住む人たちを人権差別していた時代がありましたが、「その地域の出身者であること」 を指します。同和問題ですね。したがって、職務上の区分(臨時工や熟練工などの職務上の区分)はこれに該当しません。
その他の労働条件
「その他の労働条件」には、解雇*、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件も含む趣旨です。
*解雇については、解雇の意思表示そのものは労働条件とは言えないが、労働協約、就業規則等で解雇の基準又は理由が規定されていれば、それは労働するにあたっての条件として本条の労働条件となるという趣旨である。
*「寄宿舎」とは、相当数の労働者が宿泊し、起居寝食をともにする施設であり、労働者が、独立して自身の生活態様ができる場合は、寄宿舎に該当しないと考えられます。したがって、社宅や寮は該当しません。
かって、紡績工場、製糸工場に女工寄宿舎が付属していました。
これは女工の福利厚生のためではなく、女工には前借りがあるから逃亡しないようにしたということと、早朝から就業させたいということからでした。
過酷な待遇が、女工哀史などで問題となり、また風紀上問題でもあり、政府は、昭和2年4月6日、内務省令第26号工場附属寄宿舎規則を発布しましたが、これには罰則がなく、実効はとぼしかった。
こうした歴史を受け、1947年(昭和22年)施行の労働基準法では、使用者が労働者に提供するその事業に附属する寄宿舎については、その第10章(第94条~第96条の3)及び事業附属寄宿舎規程(昭和22年労働省令第7号)・建設業附属寄宿舎規程(昭和42年労働省令第27号)によって規制しています。
判例
採用の自由
労働基準法第3条は労働者の信条によって賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、これは、雇入れ後における労働条件についての制限であって、雇入れそのものを制約する規定ではない。また、思想、信条を理由とする雇入れの拒否を直ちに民法上の不法行為とすることができないことは明らかであり、その他これを公序良俗違反と解すべき根拠も見出すことはできない。 (最大判昭和48.12.12三菱樹脂事件)
差別的取扱
差別的取扱をするとは、当該労働者を不利に取り扱うことはもちろんのこと、有利に取扱う場合も含む。
本条違反
使用者が法第3条に違反した場合は、6個月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる。


