1年単位の変形労働時間制(第32条の4、則第12条の4)

1年単位の変形労働時間制
労働基準法
1年単位の変形労働時間制とは、労使協定を締結することにより、1箇月を超える1年以内の一定の期間を平均し1週間の労働時間が40時間以下(特例事業場も同じ。)の範囲内において、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
平成29年就労条件総合調査で変形労働時間制を採用している企業は57.5%あり、そのうちの33.8%1年単位の変形労働時間制を採用しており、変形労働時間制を採用している中では、最も多く採用されています。産業別にみると、鉱業、採石業、砂利採取業(64.2%)、製造業(52.6%)、建設業(51.0%)となっている。

1年単位の変形労働時間制(第32条の4、則第12条の4)

 

32条の4  
Ⅰ 使用者は、労使協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第32条の規定にかかわらず、その協定でⅱの対象期間として定められた期間を平均し1週間当たりの労働時間40時間超えない範囲内において、当該協定(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において40時間又は特定された日において8時間を超えて、労働させることができる。
 ⅰ 1年単位の変形労働時間制の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
 ⅱ 対象期間(その期間を平均し1週間当たりの労働時間40時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、1箇月を超え1年以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)
 ⅲ 特定期間対象期間特に業務が繁忙な期間をいう。第Ⅲ項において同じ。)
 ⅳ 対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間対象期間1箇月以上の期間ごとに区分することとした場合においては、当該区分による各期間のうち当該対象期間の初日の属する期間(以下この条において「最初の期間」という。)における労働日及び当該労働日ごとの労働時間並びに当該最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間
 ⅴ その他厚生労働省令で定める事項(労使協定有効期間定め


Ⅱ 使用者は、Ⅰの協定でⅳの区分をし当該区分による各期間のうち最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間を定めたときは、当該各期間の初日の少なくとも30日前に、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者同意を得て、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働日数を超えない範囲内において当該各期間における労働日及び当該総労働時間を超えない範囲内において当該各期間における労働日ごとの労働時間を定めなければならない。


Ⅲ 厚生労働大臣は、労働政策審議会の意見を聴いて、厚生労働省令で、対象期間における労働日数の限度並びに1日及び1週間労働時間の限度並びに対象期間(Ⅰの協定で特定期間として定められた期間を除く。)及びⅢの協定で特定期間として定められた期間における連続して労働させる日数の限度を定めることができる。


Ⅳ 第32条の22項の規定は、Ⅰの協定について準用する。


労働基準法施行規則 第12条の4
(一年単位の変形労働時間制における労働時間の限度等)
1 労使協定において厚生労働省令で定める事項は、有効期間の定めとする。
2 使用者は、法第32条の4Ⅱの規定による定めは、書面により行わなければならない。
3 法第32条の4Ⅲの厚生労働省令で定める労働日数の限度は、対象期間が3箇月を超える場合は対象期間について1年当たり280日とする。ただし、対象期間が3箇月を超える場合において、当該対象期間の初日の前1年以内の日を含む3箇月を超える期間を対象期間として定める労使協定(複数ある場合においては直近の労使協定)があった場合において、1日の労働時間のうち最も長いものが旧協定の定める一日の労働時間のうち最も長いもの若しくは9時間のいずれか長い時間を超え、又は1週間の労働時間のうち最も長いものが旧協定の定める1週間の労働時間のうち最も長いもの若しくは48時間のいずれか長い時間を超えるときは、旧協定の定める対象期間について1年当たりの労働日数から1日を減じた日数又は280日のいずれか少ない日数とする。
4 Ⅲの厚生労働省令で定める1日の労働時間の限度は10時間とし、1週間の労働時間の限度は52時間とする。この場合において、対象期間が3箇月を超えるときは、次の各号のいずれにも適合しなければならない。
対象期間において、その労働時間48時間を超える連続する場合の週数が3以下であること。
対象期間をその初日から3箇月ごとに区分した各期間(3箇月未満の期間を生じたときは、当該期間)において、その労働時間48時間を超える週の初日の数が3以下であること。
5 Ⅲの厚生労働省令で定める対象期間における連続して労働させる日数の限度6日とし、労使協定特定期間として定められた期間における連続して労働させる日数の限度1週間1日の休日が確保できる日数とする。
6 Ⅳにおいて準用する法第32条の2第2項の規定による届出は、所轄労働基準監督署長にしなければならない。

要件

 1年単位の変形労働時間制を採用するためには、労使協定において、次の事項を定める必要があります。

(1)対象労働者の範囲

  法令上、対象労働者の範囲について制限はありませんが、その範囲は明確に定める必要があります。労働した期間が下記(2)の対象期間より短い労働者については、割増賃金の支払を要する場合があります。

 (2)対象期間及び起算日

対象期間は、1箇月を超え1年以内の期間に限ります。
対象期間を具体的な期日でなく期間で定める場合に限り、当該期間の起算日も必要です。

 3特定期間

  上記(2)の対象期間中の特に業務の繁忙な期間を特定期間として定めることができますが、
この特定期間は、連続して労働させる日数の限度に関係があります。
なお、対象期間の相当部分を特定期間とすることは法の趣旨に反します。

 4労働日及び労働日ごとの労働時間

  労働日及び労働日ごとの労働時間は、上記(2)の対象期間を平均し1週間当たりの労働時間が40時間を超えないよう、 また、下記に示す「■労働日及び労働日ごとの労働時間に関する限度」に適合するよう設定しなければなりません。
また、特定した労働日又は労働日ごとの労働時間は任意に変更することはできません。
なお、労働日ごとの労働時間は、上記(2)の対象期間中のすべての労働日及び労働時間をあらかじめ労使協定で定める方法のほか、 対象期間を区切って定める方法があります(下記■労働日及び労働日ごとの労働時間の特定の特例)

5労使協定の有効期間

  労使協定そのものの有効期間は上記(2)の対象期間より長い期間とする必要がありますが、1年単位の変形労働時間制を適切に運用するためには対象期間と同じ1年程度とすることが望ましいものです。

労働日及び労働日ごとの労働時間に関する限度

労働日及び労働日ごとの労働時間に関しては、次のような限度があります。

(1)対象期間における労働日数の限度(対象期間が3箇月を超える場合に限ります。)

対象期間における労働日数の限度は、1当たり280です。
対象期間が3箇月を超え1年未満である場合は、次の式により計算した日数(端数切り捨て)です。
280日×対象期間の暦日数/365
ただし、次の①及び②のいずれにも該当する場合には、 旧協定の対象期間について1年当たりの労働日数から1日を減じた日数又は280日のいずれか少ない日数です(対象期間が3箇月を超え1年未満である場合は、上記と同様に計算した日数です。)
①事業場に旧協定〔対象期間の初日の前1年以内の日を含む3箇月を超える期間として定める 1年単位の変形労働時間制の労使協定(そのような労使協定が複数ある場合においては直近の労使協定)をいいます。〕があるとき。
②労働時間を次のいずれかに該当するように定めることとしているとき。
イ.1日の最長労働時間が、旧協定の1日の最長労働時間又は9時間のいずれか長い時間を超える。
ロ.1週間の最長労働時間が、旧協定の1週間の最長労働時間又は48時間のいずれか長い時間を超える。
 ()対象期間が1年である旧協定が1日の最長労働時間9時間、1週間の最長労働時間48時間、労働日数260日であったところ、今回、 対象期間を1年、1日の最長労働時間を10時間とするのであれば、 労働日数の限度は259日。

(2)対象期間における1日及び1週間の労働時間の限度

1の労働時間の限度は10時間1週間の労働時間の限度は52時間です。 ただし、対象期間が3箇月を超える場合は、次のいずれにも適合しなければなりません。
①労働時間が48時間を超える週を連続させることができるのは3以下
②対象期間を3箇月ごとに区分した各期間において、労働時間が48時間を超える週は、週の初日で数えて3以下
 なお、積雪地域において一定の業務に従事する者については、①及び②の労働時間が48時間を超える週についての制限はありません。そのほか隔日勤務のタクシー運転の業務に従事する労働者のうち一定のものについては、1日の労働時間の限度は16時間です。

(3)対象期間及び特定期間における連続して労働させる日数の限度

対象期間における連続して労働させる日数の限度は、6です。
特定期間における連続して労働させる日数の限度は、1週間に1日の休日が確保できる日数です。 

労働日及び労働日ごとの労働時間の特定の特例

対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分して、労働日及び労働日ごとの労働時間を定めることができます。この場合、
(1)対象期間が始まるまでに、労使協定において、具体的な労働日及び労働日ごとの労働時間の代わりに次の事項を定めてください。
①最初の期間における労働日及び労働日ごとの労働時間
②①の期間以外の各期間における労働日数及び総労働時間
2)上記(1)の②の各期間の初日の30日以上前に、当該各期間における労働日及び労働日ごとの労働時間 (ただし、上記(1)の②の労働日数及び総労働時間の範囲内でなければなりません。)を、 過半数労働組合又は労働者過半数代表との同意を得て書面で定めてください。

労使協定

 所轄労働基準監督署長に届け出なければなりません。

対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分する場合の特例

1年単に変形労働時間制の労使協定には、原則として、「対象期間における労働日数及び当該労働日ごとの労働時間」を定めなければならないが、対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分する場合は、次のような方法もある。

対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分する場合の特例

各期間の初日の少なくとも30日前にその事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、ないときは労働者の過半数を代表する者 の同意を得て書面により、各期間ごとに定めた労働日数及び総労働時間を超えない範囲内において、各期間における労働日及び労働日ごとの労働時間を定める。(則12条4.2項)

割増賃金の支払い

 労働時間が法定労働時間を超えた場合には、その超えた時間について割増賃金を支払うことが必要です。
 次の時間については時間外労働となり、割増賃金を支払う必要があります。
  1. 1日の法定時間外労働→労使協定で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
  2. 1週の法定時間外労働→労使協定で1週40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は1週40時間を超えて労働した時間(①で時間外労働となる時間を除く。)
  3. 対象期間の法定時間外労働→対象期間の法定労働時間枠(40時間×対象期間の暦日数÷7)を超えて労働した時間(A又はBで時間外労働となる時間を除く。)

途中採用者・途中退職者等の取扱い

 対象期間より短い労働をした者に対しては、使用者はこれらの労働者に実際に労働させた時間を平均して40時間を超えた労働時間について、次の式により労働基準法第37条の規定の例による割増賃金を支払うことが必要です。割増賃金の清算を行う時期は、途中採用者の場合は対象期間が終了した時点、途中退職者の場合は、退職した時点となります。
 なお、転勤等により対象期間の途中で異動のある場合についても清算が必要になります。
割増賃金を支払う時間=実労働期間における実労働時間-実労働期間における法定労働時間の総枠*-実労働期間における上記①、②の時間外労働
*(実労働時間の暦日数÷7日)×40時間

育児を行う者等に対する配慮

育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮が必要。
 

参考通達

対象とされる業務 

1年単位の変形労働時間制においては、労使協定等により、変形期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を前もって定めることが要件とされており、最長1年までの一定期間における計画的な時間管理が可能な業務が対象となるものであり、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような業務は、対象とできないものであること。例えば、貸切観光バス等のように、業務の性質上1日8時間、週40時間を超えて労働させる日又は週の労働時間をあらかじめ定めておくことが困難な業務又は労使協定で定めた時間が業務の都合によって変更されることが通常行われるような業務については、本変形労働時間制を適用する余地はないものであること。(平成6.3.11基発132)

労働日の特定

 労働日を特定するということは反面、休日を特定することであるから、7月から9月までの間に労働者の指定する3日間について休日を与える制度がある場合のように、変形期間開始後にしか休日が特定できない場合には、労働日が特定されたことにはならない。(平成6.5.31基発330)

労働時間の特定

 1年単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定により、変形期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を具体的に定めることを要し、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度は、これに該当しない。(平成6.1.4基発1号、平成11.3.31基発168)

特定された時間の変更

 労使協定に「労使双方が合意すれば、協定期間中であっても変形性の一部を変更することがある」旨明記されていたとしても、これに基づき対象期間の途中で変更することはできない。(昭和63.3.14基発150)

 

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