労働基準法
減給処分(制裁としての減給)とは、労働者の企業秩序違反行為に対する懲戒処分(制裁)の一つで、一定の期間、一定の割合で賃金が減給される措置である。
減給処分は労働者に対する不利益処分になるため、労働者保護の観点から法的な制限が設けられています。労働基準法では、「就業規則で労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10 分の1を超えてはならない。」と規定されています。
また、賞与について、就業規則等で支給要件が明確に定められている場合、賞与も労働基準法で定める「賃金」となるため、「制裁として賞与から減額することが明らかな場合は、賞与も賃金であり、法第91 条の減給の制裁に該当する。」とされています。
就業規則 制裁規定の制限(法91条)
第91条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。
制裁の限度
就業規則に減給の制裁を定める場合は、減給の額を次の限度内にしなければならない。
- 1回の事案に対しては減給の総額が平均賃金の1日分の半額以内
「減給限度額 = 平均賃金 ☓1/2」
- 1賃金支払期に発生した数事案に対する減給の総額が、当該賃金支払期における賃金の総額の10分の1以内
常時10人未満の労働者を使用する使用者に対する適用
常時10人未満の労働者を使用する使用者において就業規則を作成したときは、それも本法にいう「就業規則」として、第91条[制裁規定の制限]、第92条[法令及び労働協約との関係]及び第93条[労働契約との関係]の規定は適用されると解すべきである。
限度を超えて減給の制裁を行う必要が生じた場合
「総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とは、1賃金支払期に発生した数事案に対する減給の総額が、当該賃金支払期における賃金の総額の10分の1以内でなければならないという意味である。もし、これを超えて減給の制裁を行う必要が生じた場合には、その部分の減給は、次期以降の賃金支払期に延ばさなければならない。(昭和23.9.30基収1789号)
欠勤等により賃金総額が少額となった場合
「1賃金支払期における賃金の総額」とは、当該賃金支払期に対し現実に支払われる賃金の総額をいうものであり、したがって、1賃金支払期に支払われるべき賃金の総額が欠勤等のために少額となったときは、その少額となった賃金総額を基礎としてその10分の1を計算しなければならない。(昭和25.9.8基収1338号)
賞与からの減給による制裁
賞与から減額する場合も1回の事由については平均賃金の1日分の半額を超え、また、総額については1賃金支払期の総額(賞与額)の10分の1を超えてはならない。(昭和63.3.14基発150号)
減給の制裁に該当しないもの
次のようなものは、減給の制裁にはあたらないとされている。
- 遅刻・早退した時間分時間分の賃金カット。ただし、遅刻・早退した時間分を超えるような賃金カットは減給の制裁となる。(同上)
- 出勤停止処分を受けた場合の出勤停止期間中の賃金カット。ただし、この場合は、就業規則に出勤停止期間中は賃金を支払わない旨定めていなければならない。(昭和7.3基収2177号)
- 懲戒処分を受けた場合には昇給せしめないといった昇給の欠格条件の定め。(昭和3.31基収938号)
- 制裁として格下げになったことによる賃金の低下。ただし、従前の職務に従事せしめつつ、賃金額のみを減ずるような場合は減給の制裁となる。(昭和3.14基収518号、昭和37.9.6基発917号)
減給の制裁における平均賃金の算定起算日
減給の制裁における平均賃金の起算は、減給の制裁のときに使う平均賃金については、減給の制裁の意思表示が相手方に到達した日をもって、これを算定すべき事由の発生した日とする。(昭和30.7.19基収5875号)
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