休業(補償)給付
労働者が、業務上または通勤が原因となった負傷や疾病による療養のため労働することができず、そのために賃金を受けていないとき、その第4日目から休業補償給付(業務災害の場合)または休業給付(通勤災害の場合)が支給されます。
支給要件 (法14条1項)
休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給するものとする。【休業給付(法22条の2,1項、2項)】
Ⅰ 休業給付は、労働者が通勤による負傷又は疾病に係る療養のため労働することができないために賃金を受けない場合に、当該労働者に対し、その請求に基づいて行なう。
Ⅱ 第14条[休業補償給付]及び第14条の2[休業補償給付の支給制限]の規定は、休業給付について準用する。
休業(補償)給付の要件
休業(補償)給付は、労働者が業務上又は通勤による負傷又は疾病のために休業した場合に、次の要件を満たす休業日について支給される。
⑴ 療養のために休業する日であること
⑵ 労働することができない日であること
⑶ 賃金を受けない日であること
⑷ 第4日目以後の休業日であること
療養のため
休業(補償)給付は、「療養」のために休業していなければ支給されない。したがって、傷病の治ゆ後に行われる処置(外科後処置)による休業については、当該保険給付は支給されない。
【参考通達】
(治ゆ後の義肢装着)
患部の治ゆ後に行う義肢の装着は療養の範囲に属するものではないから、たとえ義肢装着のため療養所に入所しても、その入所期間中の休業に対しては休業(補償)給付は支給されない。 (昭和24.2.16基収275号)
労働することができない
「労働することができない」とは、労働者が負傷し又は疾病にかかる直前に従事していた種類の労働をすることができない場合のみでなく、一般に労働不能であることをいう。
【参考通達】
(夏期休暇中のアルバイト学生に係る休業補償給付)
夏期休暇期間中にアルバイトとして稼働して受傷した大学生であっても、医学的に一般人として観察し当然労務に服することができないと認められる期間については休業補償給付の対象となる。また、当該学生がその後療養を継続しながら大学に登校受講する場合、療養のため休業を要する者であっても、受講可能の場合もあり、労働契約の本旨とする健全な心身で就業する状態とは自ら相違するものであるので休業補償給付を支給すべきものである。 (昭和28.4.6基災収969号)
賃金を受けない日
「賃金を受けない日」とは、⑴又は⑵のいずれかの日をいう。
⑴ 所定労働時間の全部について労働不能である場合
賃金を受けない日 = 事業主から全く金額を受けない日
あるいは
事業主から受領した金額が平均賃金の60%未満である日
⑵ 所定労働時間の一部分について労働不能である場合
事業主から受領した金額が
賃金を受けない日 =「平均賃金と当該労働時間に対して支払われる賃金との差額」の60%未満である日
待期期間
休業の最初の3日間は、待期期間とされ、休業(補償)給付は支給されない。この待期期間は継続している必要はなく、また、その間使用者から金銭(賃金)を受けていても成立します。
休業補償の支払義務
休業補償給付(業務災害)の場合は、当該3日間について、労働基準法の規定により事業主が休業補償を支払う義務が生じる。 (昭和40.7.31基発901号)
【参考通達】
(刑事施設に拘置等されている場合)
休業(補償)給付の待期期間の計算に当たっては、労働者が刑事施設に拘置等されている日は、待期期間に算入しない。 (昭和62.3.30発労徴23号、基発174号)
(待期期間の扱い)
その日の所定労働時間内に災害が発生した場合は、当日を休業日とし(待期期間に算入し)、残業時間中に災害が発生した場合は、当日は休業日としない(翌日から待期期間に算入する)。言い換えると、所定労働時間の一部休業の場合のみ負傷当日を休業日数(待期期間)に算入する。なお、所定労働時間内に災害が発生し、所定労働時間の一部について労働することができない場合については、平均賃金と実労働時間に対して支払われる賃金との差額の100分の60以上の金額が支払われているときであっても、その日は休業日(待期期間)とする。(昭和27.8.8基収3208号、昭和40.9.15基災発14号)
【判例】
(雇用契約上賃金請求権を有しない日)
法14条1項に規定する休業補償給付は、労働者が業務上の傷病により療養のため労働不能の状態にあって賃金を受けることができない場合に支給されるものであり、右の条件を具備する限り、その者が休日又は出勤停止の懲戒処分を受けた等の理由で雇用契約上賃金請求権を有しない日についても、休業補償給付の支給がされると解するのが相当である。 (最一小昭和58.10.13雪島鉄工所事件)


